『あっれ、黒子っちが電話なんて珍しいっスね。どうしたんスか?』
「少し聞きたいことがあるんですが、みょうじなまえという人を知っていますか?」
『なまえっち? 知ってるけど、何でまた」
「え、知っているんですか」
『いやだな、何度も話したじゃないっスか、俺の華麗なヒーローっぷり!』
「……?」
『マジで覚えてないとか……えーゴホン。ある日、いつも通り部活帰りの夜道を歩いていた俺の前に、悪漢数名に絡まれている女子が! 俺は果敢にも一人で彼女を助けに行き、難なく切り抜け、目に涙を浮かべた麗しいその子を家に送り届けてあげました、と。確か中二位いだったっスかね」
「(覚えてない……)帰り道、何か話しましたか?」
『やけに詳しく聞くんスね。まあいいけど。……んー、まあバスケのこととか? あ、黒子っちの凄さもちゃあんと宣伝しといたから安心し』
「なるほどそれだ。ありがとうございました、では」
『え、ちょ』

 プツン。声を遮り途切れた回線は、また暫く使われることはないだろう。……それにしても。

「火神くんの言う通りかもしれない」

 必死になって自分を探す一人の生徒。繋がりは黄瀬涼太。なんだか少し寂しい気持ちになった。

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