事情説明を終えた後、エースは顔を曇らせ「どうすっか」と言った。私も「どうしましょう」と同調し、笑みを隠す。もし、もしもだが、白ひげ海賊団に置いてもらえるならエースを救えるかもしれない。ティーチから守れるかもしれない。堪え切れなかった笑いをため息に変えた。 「記憶が無い、か……ナース達に診てもらうか、それとも……」 それにしても、あの彼と会話出来ているという現実に脳がスパークしそうだ。クラクラする。今すぐ両腕で存在を確かめたいが……変人のレッテルを貼られるだろう。 記憶喪失の人間を演じて、徐々に馴染んでいけば、きっと助けられる。いや、絶対に。やってみせる。 「おーいエース、そろそろ朝メシ……」 不意に背後の扉が開き、誰かの怠そうな声が響いた。途中で途切れたのはパジャマ姿の私と半裸の彼が相手の目に入ったからだろう。いや、彼はいつだって上半身裸だから、異質なのは私だけか。 「うわっマルコ! いや、その」 「……後で親父に言っとけよい、島から女連れてきたって。ゲンコツで済めばいいけどなァ?」 「違う! 違うんだよ! な、なあ?」 「え、あ……記憶が無いのでなんとも言えませんが、きっと違います」 「記憶が飛ぶほど……」 「違うって言ってんだろ! とりあえず此処に座って話を聞け!」 「嫌だよい。埃だらけじゃねェか」 わあわあ騒ぐ二人をしばらく眺め、計ったように(実際タイミングを伺っていたが)「あの」と声をかけた。 「此処って、どういった場所なんですか」 静まり返る室内。一番隊隊長が小さく「同意なしかよい」と呟き、エースがその肩を殴った。 前/back/次 |