寸劇 | ナノ


 太陽は私たちにとってかけがえのないモノだと、誰もが知っている。あの陽光があるからこそ、緑は美しく育ち、湖面は輝く。
 その人は私にとって太陽そのものだった。紙面上の存在でありながら、その光は此方側まで届き、私に強烈な憧憬を抱かせる。
 好きだった。思慕なんてものじゃない。強く、激しく、あの輝きに陶酔していた。守る力があり、ある程度の権力を持ちながらも親しみやすい。
 太陽だった。彼の能力に相応しく、その性格は太陽だった。勿論陰はある。それでも輝きを損なわない、なにか強いものがあった。


太陽は失われた



 ――私は。私は、どうすれば良いのだろう。行き先を見失い彷徨い果てる思念は何処へ。彼の影を追い仮面を被った私の居場所と意味は。パラレルワールドでもなんでもいい。彼が助かる見込みは無いのか。心臓から血が流れて止まらない。生きているのが寂しい。酸素が痛い。もう呼吸できない。

「Dear...」

 ポートガス・D・エースへ。あなたが生き続けられるなら私は死んでもいい。




back