白い玉座の上で穏やかな笑みを浮かべる者に、呆れたような表情で抗議をする男が一人居た。
「本当に大丈夫なのか? 万が一イーノックに被害が及べば……いや、もう巻き込まれているから…………ともかく、私たちの仕事が増えるようなことがあれば、地上にも影響が出るんだ。分かってるのか?」 「ああ、勿論。どの道彼女は追放されなければならない存在だ。それなら最後に一仕事してもらおうと思って」 「……そうか」
残酷といえるその言葉は、堕天した者達への怒りからだろう。犠牲となった少女を哀れみ、そしてその巻き添えとなった青年を憂いた。
「ルシフェル、そろそろ終わるだろうから保護しておいてくれ」
軽く手を挙げその場を立ち去る。誰も予測できない彼女の未来は何処へ伸びていくのか、はたまた此処で潰えてしまうのか。答えの出ない問いを脳内に廻らせながら、指を鳴らした。
パチン
「ルシフェル!」
場面が変わってすぐに現れた青年に、胸中で嘆息する。逞しい腕の中には、禍々しい気を発する少女がいた。 | |
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