私の両親は間違っていたのだろうか。もしそうなら、私はどうすればいいのだろう。今更引き返せない。引き返すための身体はもうない。誰かのためと銘打って親切を擦り付けるのが正義なら、私はそれに従いたくないと思う。全身全霊神に捧ぐのが真理だとしたら、私は。

 正義でも真理でもないのかもしれない。こんなに苦しくて、でも何一つ救われていないのだ。これは間違っている。……のかも。間違いだとして、そしたら私はどうなる? どうしてこんなに醜い羽が皮膚から生えるんだろう。化け物だ。皆言ってたじゃないか。その通りだ、私は化け物以外の何者でもなかった。
 涙が止まらない。ここには誰もいない。治せない場所を誤った。病気の親鳥から生まれた雛は高確率で奇形だ。私は病気? 私の芯はどうなっている? 誰か教えて。出来れば正して。間違ったまま、生きていたくない。


「――ぁあ――グ――」

 小さな少女が呻いている。肌からは絶えず血が滲み、髪は伸びきっていた。今の私には、あれが魔女なのか、それとも――それとも自分なのかさえ区別できない。
 操作しなくとも飛んでいく硝子の羽が恨めしい。きっともう手遅れだ。


 助けてやったのに。助けてやったのに。助けてやったのに。助けてやったのに。助けてやったのに。助けてやったのに。助けてやったのに。助けてやったのに。助けてやったのに。助けてやったのに。助けてやったのに。助けてやったのに。助けてやったのに。助けてやったのに。助けてやったのに。助けてやったのに。助けてやったのに。助けてやったのに。助けてやったのに。助けてやったのに。助けてやったのに。助けてやったのに。助けてやったのに。助けてやったのに。助けてやったのに。助けてやったのに。助けてやったのに。助けてやったのに。助けてやったのに。助けてやったのに。





「なんだ、あれは……」

 禍々しい霧がイーノックの肌を毒していく。しかし本人はその痛みに気づくことも無く、ただ、きっとこの世で最も残酷で残虐なモノを見つめていた。

「……悠は、どこに」

 呟いた矢先、目の前の塊から眩い光が飛び散った。

 何も見えない。彼女は無事か? 早く、堕天使達を捕らえなければ――。








(救いに見返りを求めるのは、天の者のすることじゃない。
 私は天使になれなかった)
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