高橋悠は氷帝学園男子テニス部のマネージャーだ。
どうしてあのテニス部のマネになったかは、大した話でもないので割合しよう。
多少嫌がらせも受けたりはしたが、子供が玩具に飽きるように、そんなに長く続くものではなかった。
いつものように朝練の手伝いをして、教室に戻り教師を待つ。
いつもよりざわついている教室内は、転校生の話で溢れかえっていた。
余力があればその話に加わったが、疲れ果てた悠にそんな体力は無かった。
「おーい席つけー」
教師が来たようだ。のろのろと体を起こし前を向く。斜め前から労わりの声が聞こえたので、大丈夫とだけ返しておいた。
「知ってると思うが、このクラスに新しい生徒が加わる。……入って来い」
期待と興奮が詰まったこの教室に入るのは相当躊躇われる。後の落胆した空気を味わうのもかなり嫌だろう。転校生が恵まれた容姿であることを願った。
が、願うまでもなかった。
おそるおそるといった風に教壇に立った生徒は、
「神崎雪乃です。よろしくお願いします!」
発光しているのではないかと思うほどの、美少女だった。