日の光が暖かい。袋を開けてパンをかじる。
隣を見ると、相変わらず美しい彼女がお弁当をつついていた。ああ、作ってもらうのもいいかもしれない。
「悠、ちゃん」
「なに?」
ハチミツを溶かしたような、甘い甘い声が自分を呼んだ。それだけで、こんなにも。
「これからもお昼、一緒に食べるの……かな」
「当たり前じゃん」
そう、独り占め。あいつらになんか渡さない。神崎さんをあっさり裏切った奴等になんか、絶対に。
あいつらと違って綺麗じゃない私だけど、神崎さんのために頑張ってる。少しでも釣り合う人間になりたい。
「私達、付き合ってるんだから」
とどめとばかりに言えば、彼女は黙り込んだ。そういえば、この子はあの日以来笑っていない気がする。自分がしたことの罪を知ったんだと思う、けど……芥川くんに振られたショックとかだったらどうしよう。
『高橋さん、目を覚まして下さい。あの子のことよく見て。目が覚めれば、可愛いなんて思えなくなるから』
鳳くんは、きっと優しすぎるんだろう。最後まで付き合うのに反対していた。……いや、もしかして神崎さんがまだ好きだから? わからないけど、もうどうでもいい。
この子は私のなんだから。
「ねえ、悠ちゃ、」
「……あなたが私に何をしたのか、よく思い出した上で言ってね」
また黙り込んでしまった。まだ、いい。ゆっくり仲良くなっていけばいい。
時間はたっぷりある。隣の席だし、部活だって一緒だ。少しずつ、少しずつ、私だけになればいいから。