「神崎、さ、」
「……いい格好ね、似合ってる」
勢い良くドアを開ければ、携帯をいじる神埼さんがいた。
仕事なんて、全然してない。
「もう充分でしょ、もういいじゃん! もうあいつらみんな貴方が好きだよ! もう、終わりにしてよ!」
悲鳴のような声が出た。きっと認めたくないんだ。みんな、神崎さんが好きになっちゃった。そんなの嫌だ。私だって、痩せて、化粧もするようにして、前よりずっと見目は良くなったつもりだ。あいつらには適わなくても、綺麗になった。
「そうだね、折角だから悠ちゃんには話すよ」
私の声を無視して、携帯をパチンと閉じ椅子に座る。
太陽のような笑顔をして、神崎さんは話し始めた。
「私ね、元々この世界の人間じゃないんだ。ある日神様がこの世界に飛ばしたの。どうせなら美人にして、逆ハーになるようにしてよってお願いしたら、その通りにしてくれた。みんな私の虜になっちゃうんだよ。……なのに、ね」
一旦切って、神崎さんは私を見た。瞳の奥に暗いものが見える。
「ジローだけは、好きになってくれないの。私ね、ジローが好きでこの世界にきたの。正直、ジロー以外どうでもいい。
彼の周りに女の子がいないようにしたくて、悠ちゃんを消そうと思ったんだけど……なかなか折れてくれないし、肝心の彼が貴方を構うようになっちゃって、イライラしてる。どうしてジローは私を好きになってくれないのかなあ?」
「……それは、お前がそんな性格だからだ」
後ろから声がした。宍戸先輩だ。振り向けば、鳳くんも、向日先輩もいた。バタバタと、また何人か増える。……ああ、レギュラー全員いる。
「よくも、騙したな」
「かわいい顔してとんだ性悪女やったなァ。どないする?」
「……悪かった、悠。本当にすまない。俺は、……俺達は馬鹿だった」
どの面下げて言ってんだ、と叫ぼうとしてやめた。こいつらはどうでもいい。
問題は神崎さんだ。
「悠、どいてくれ。その女に、」
神崎さんは、震えていた。