芥川くんが練習に来ていた。その目はやっぱり、彼女を捕らえている。
唯一の味方かもなんて思っていた。彼だけは、彼女と仲良くしないでくれるかも、なんて。

彼女はもう、誰かと付き合っているのだろうか。

「ブスはコート入ってくんなよな」
「今度雪乃に手ぇ出したら、この学園から追い出すぜ? なあ、樺地」
「……ウス」

叩かれた所が痛い。蹴られたところが苦しい。
これでも頑張ってダイエットしたり化粧したりしてるんだけどな。そっか、ブスか。もっと綺麗にならなきゃ、見てもらえない。

悲しい。苦しい。痛い。起き上がれない。仕事しなきゃ。……なんで? あいつらのためにすることなんてないんじゃないの? なんで? 私、こんなに頑張ってるのに。

「悠、保健室いこ」
「……どうせ、ジローも、そういって騙して、蹴るんでしょ。行か、ないよ」

両の手で顔を覆う。近づいてきた金髪が早く消えてくれますように。

「行こう、痛そうだC」
「最近練習出て無かったじゃん、早く行ってきなよ」
「悠、立って」
「いい、やだ。皆、あの子が大好きなんだ」

ぼろぼろ泣き始めた私を、困ったように見つめる彼。
とうとう諦めたのか、引っ張っていた手を離した。が、そのまま私の横に腰を下ろす。ここは土の上だ、芝生じゃない。ユニフォームが汚れてしまう。

「そりゃあ、俺だって可愛い子は好きだから、それなりにあの子のこと好きだけど」
「ほら、」
「でも、樺地が俺のこと起こしてくんなくなって、悠が泣いてるのは何かおかしいんじゃないかなーって」

だから、保健室いこう。



私はやっと、立ち上がった。
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