ロスタイム



「もう二度とひとりで行動しません」
「……もう二度とひとりで行動しませんたぶん」
「同盟解消するぞ」
「絶対ひとりで行動しません」
「よろしい」

藤堂くんてばいつのまにかたくましくなっちゃって、私びっくりです。ヘタレイケメンどこいった。主導権は完全にあっちにいってしまったようである。いいや、まだ取り返せるぞ。頑張れ悠! イケメンの鋭い眼光なぞ恐れるに足らん……! でもやっぱり怖い。

「すげえ……心配した」

さっきの怒気はどこへやら、目を伏せてぽつりと呟いた。不謹慎にも心臓は大きく鼓動を打つ。
あーあ、うわあ。本当に、なんでだろう。いやイケメンだけども、だったら斎藤だってかっこいい。もう部活の時間なのに保健室に入り浸ってくれてるような人間だからだろうか。鳶色の髪がモフモフだからだろうか。手が綺麗なのに男の子っぽいからだろうか。いや、いやいやいや。

「……もう、絶対ひとりじゃ何もしないからサ」

堂々巡りの思考を止めて、はっきり言った。今優先すべきは王子と姫の恋だ。もうすぐ夏休みだし、プールにでも誘う……とかどうだろう。もうちょっと先まで考えると、文化祭と体育祭か。それまでに断ち切れたらいいんだけど。じゃなくて。

「そろそろ部活行ったほうがいいんじゃない?」
「うわっやばい! 行ってくる! 動くんじゃねーぞ!」
「わかってるって」

カバンを引っ掴んでバタバタと出て行く背中を見つめながら、悠は伸びをした。完全に行ったと確認してから、ベットから降りる。

「おや、もう大丈夫なんですか?」
「このくらいでへばってたら、情報なんて危ないもの扱ってられないですよ」

奥から声をかけてきた山南先生に返事をして、指をパキパキと鳴らした。

「それに、仕返ししないといけませんから」

ごめん、藤堂。

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