他愛の無い話にさりげなく質問を混ぜ込み、藤堂の初恋が雪村千鶴であると知った。
初恋は実らない、か……。
いや、いずれ叶う恋だ。変えていくのは私と藤堂自身。
事件の中心に自分がいることが堪らなく楽しい。知っているというのは世界で一番幸せだ。

「斎藤くんよ、雪村千鶴の好きなタイプ知ってる?」
「またお前か……」
「そんな嫌そうな顔しないでくれよ」

私は今、風紀委員の中でも一際厳しいと言われている斎藤一に突撃インタビュー中だ。
以前も雪村千鶴恋愛騒動で彼にはお世話になっており、今回も良い情報を聞き出せないか奮闘している。

「千鶴は総司と付き合っているのだろう。ならば総司のような者が好みではないのか?」
「趣味わりーな」
「口を慎め」
「まあかっこいいしね、いいんじゃない? でも怖いんだよなーあの人」
「それはお前が千鶴についてしつこく聞いて回るからだろう」
「そうでしたっけね」

腹いせに、すっと伸びている鼻をつまんだ。美形の変顔はなかなか面白い。
顔をしかめて離せと言った彼を見つめる。

「なんか斎藤くんチョコの匂いするんだけど」
「ああ、先程千鶴に貰って……」
「マジかよ! どういうことだ?! 雪村千鶴早くも浮気の兆し!」
「千鶴は元々そういう性格だ。そんなことをする人間ではない」
「彼氏がいるのにそういう、…あ」

肝心の彼氏は、そういう行為を嫌がってるんじゃ?
こうなったら沖田にも話を聞かなければ。単身で敵地へ乗り込むのは些か気が引けるが、好奇心には勝てない。
とりあえず藤堂との作戦会議は放課後に延ばして、次の休み時間に沖田に取材だ。
一歩足を踏み出したところで、首がクッと絞まった。誰か、……斎藤が襟を掴んでいる。

「貴重なお時間を私のために割いて頂きありがとうございました。……離してくれませんか」
「一つ聞きたいことがある。千鶴の恋人に関しての情報は、すべてお前が調べたものか?」
「そうだけど…」

やけに声が近い。耳朶に薄い息がかかり、顔に熱が集中する。
これだから天然は……。

「そうか」

ぱっと手が離され、勢い余って転びそうになった。




だってぼくたちティーンズ




「あの、もう少し優しく取り扱ってください」
「(近づきすぎた……)す、すまない」

しゅんとした様子が犬のようで、笑いを堪えるのが大変だ。

自身の教室まで徒歩2分。授業開始のチャイムが鳴る。

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