適当なジュースを買ってきて、藤堂の頭に乗せた。何も言わない。いくら私が好奇心旺盛といっても空気は読める方だ(と思う)、ここで相手の気持ちを根掘り葉掘り聞くようなことはしなかった。 「……つめてぇ」 「飲む?」 「おう」 斎藤くんと、何故かついてきた永倉先生が乱入しなかったら、どうなっていたことか。いつもの私だったら携帯を取り出して激写していた。キスシーン、それも沖田総司と雪村千鶴のだ。二人の熱々っぷりがよくわかるのに。ぼんやりしながらサイダーを喉に流し込む藤堂を見つめた。彼は今何を思っているんだろう。 「ついてきたのって、永倉先生だったんだ。確かにプールとか好きそうだけどさ」 「面白い人だよな」 「うん」 ふっと頬を緩める藤堂に、少なからず安心した。 じりじりと照りつける太陽が地面を焦がす。私が日向に居るのに気づいたのか、藤堂は手招きをした。彼が座っている花壇はちょうど大木の陰になっていて涼しい。でも、私は動かなかった。汗がこめかみを伝っていく。このままいくと熱中症だ。そうなっても良かった。……いや、いっそ倒れたい。沖田がついてくるのを予想していながら、どうして私はプールなんか提案したんだろう。ばかじゃないのか。ばか。私はばかだ。知りたい知りたいばかりで、人の気持ちなんてこれっぽっちも考えてなかった。ああ、ばかだ。ばか、「ばーか」 「そんなとこにいたら暑いだろ」 ぺち、と缶が頬にぶつかり、間抜けな声が出た。冷たい。中身はほとんど無いけれど、まだ十分冷えている。ぐいぐいと飲みかけのサイダーを押し当てられ、口から呻き声が漏れた。 「ちょ、やめ」 「俺さ、なんか知らないけど、あんまりショックじゃなかった」 反射的に顔を見上げる。思っていたより背が高かった。 「やっぱりなって感じだった。だから、大丈夫。な?」 「意味わかんない」 「わかれよ」 藤堂はにっと笑って缶を放った。見事、ごみ箱の中に落ちる。無性に泣きたくなった。 「名前で呼んでいいか?」 「勝手にしたまえ」 「俺らタッグ組んでるわけだし、名前で呼び合いたいじゃん」 「へえ」 「機嫌直してくれよ、悠」 「別に不機嫌じゃないし」 「そうかー?」 謝るタイミングを完全に失ってしまった。しかも、名前呼び。私って相当嫌な奴だ。もしかしたら、藤堂が 「そうだよ、平助王子」 ブラックホール 私を見てくれるかも、なんて。 |