「ギラギラと照りつける太陽に目を細め、藤堂平助は口角を上げた。そう、今日こそ可愛いあの子を己の手中に収め」
「なにやってんの悠ちゃん」
「ナレーション練習ですよ沖田くん。あ、君はライバルですからね」
「そんなことより早く着替えてきなよ。みんなもう行っちゃったでしょ? 僕も着替え終わったし」
「そんなことってなんですか。結構重要ですよ」

沖田は面倒くさそうな表情をして去っていった。ごそごそと荷物から携帯を取り出し、メモ帳を開く。『沖田総司(彼女有)の今年の水着は水色! 昨年より引き締まった身体に注目!』鍵つきで保存し、またバックの奥底へしまう。ちなみに雪村千鶴の水着は予想通りピンクだった。フリルつきのビキニ。藤堂が見たら失神しそうだ。

「あれ、悠さん着替えてないんですか?」
「っわ、雪村さんか。びっくりした。今から行くとこだよ」

千鶴でお願いしますと言われたものの、沖田が物凄い笑顔を向けてきたので雪村さんと呼び続けている。今に見てろ、雪村千鶴はお前のものじゃなくなるんだ!
緩む口元を押さえながら急いで水着に着替えた。周りの女性のものを観察しながら、今年の流行は水玉と検討をつけた。来年は淡い色が流行るんじゃないかと予想している。

「おーい、こっちだぞ!」

藤堂平助。オレンジ色という暖色系で活発な印象を与える作戦できたか。なるほど似合ってる。かっこいい。じゃなくて。

「水着、褒めてあげた?」
「あ……あー!」
「うわー…あれほど言ったのに……」
「し、仕方ねーだろ! 見るだけで精一杯だったんだよ! つかお前なんでパーカー着てるんだ?」

不思議そうな目でじろじろとパーカーを見遣る藤堂。いや、普通羽織るでしょ。雪村さんだってさっき着て……あれ、雪村さんがいない。沖田もいない。ビーチボールで遊んでいる女子の群れとスライダーに並ぶ小学生の叫び声。二人はどこにもいない。

「総司と千鶴どこ行った?」
「知らん」
「ちょっと探してくる」
「え」

ちょっと、それは、まずいんじゃ。やんわり引き止めるも藤堂平助は早歩きで行ってしまった。そういや走るの禁止だったっけ、ここ。
カップルが消えた。つまりイチャイチャパラダイスな可能性大だけど……邪魔しにいくのは、まあ、ライバルとしていいと思う。でも藤堂が受けるショックは計り知れない。ここは私が行くべきなのだ、コンビとして。

ため息をついて走り出した。私は藤堂と違って真面目じゃない。何かを知るためだったら平気で規則を破る。と思う。お兄さんにピピーと笛を吹かれたけれど、構わず走り続ける。角を曲がって見つけたのは、キスをしている一組のカップルと、それを呆然と見つめる藤堂だった。




オシャマなサディズム



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