生徒指導の先生を廊下で捕まえて、保健室に引っ張っていった。加害者である女子生徒の名前を述べて、彼女らがした行動を話す。そんなまさか、あの子達が、とかなんとか言ってヘラヘラ笑った教師に笑みを返し、山南先生を呼んだ。チェックメイトだ。

「いや、嘘と言ってくださいよ……」
「申し訳ありませんが、彼女が危険な目にあったのは本当のことです。……常人でしたら、今も眠ったままでしょう」

常人の部分を強く言って、こちらに目配せする山南先生。なんだ、私が普通じゃないとでもいうのか。
しかし山南先生はとても恐ろしい人なので、つっかかることはしない。少しため息をついて、目の前の教師に言い放つ。

「相応の処分、下してくださいね」

暴力に訴えなかっただけ、褒めてくれたまえ藤堂くん。




ジグザグ




ミーンミンミンミンー……ジィー―――

「ちゃんと誘った?」
「……お、う」
「まさか……まあ、仕方ないけど、……沖田先輩と不愉快な仲間達もついてくるとか」
「あー……」
「……どんまい」

終業式が終わり、放課後の教室で雑談をする生徒数名。私と藤堂(コンビ名未決定)もその中の一組だ。爽やか王子は、勇気を振り絞って雪村千鶴をプールに誘ったが、そんなの沖田……が黙っているはずがない。僕も行く、あ、じゃあ俺もーなになに俺も混ぜろよ、という風に邪魔者がベッタリくっつくことになった、らしい。可哀想に。

「つかさ、お前、本当になにもしてないよな?」
「なにが」
「あいつらだよ。自主退学の」
「あー? ああ、女の子達か。私は別になんにもしてないけど」

私は、何もしていない。先程の終業式で、教師の口から退学したという事実だけ知らされた。
彼女らが何を考えてここから逃げようと思ったのか、なんて、私が知る由もないし、知ろうとも思わない。なんか悪いことしたなあとは思う。

「どーしたんだろうねー」

人を想う気持ちは、とても恐ろしい。訝しげにこちらを見る少年への気持ちは、今はまだ小さいけれど、いずれ私を飲み込むくらいに膨らむだろう。彼女らを暗い嫉妬に陥れた感情。早く断ち切らなければ、いずれ彼に協力出来なくなるのは分かりきっていた。

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