そろそろ英語の練習でもしてみようかと思った。

自室を出て、仕事をしているLの横を通る。今日も彼は仕事をしている。さっき私が淹れたコーヒーは、既に三分の一ほどしか残っていない。
本当に探偵らしい。でも、こんなに奇抜な探偵がいていいのだろうか?
私は世間の知識に疎いから、よくわからない。

「新聞、読みたいんですか」

手に取った英字新聞を、白い手が横から掠め取る。
振り向くと、Lが真後ろに立っていた。ふわりと甘い香りがして、何故か心臓が不自然な動きをする。とく、とく。
不思議そうにこちらを見るLが、私の意識を現実に戻した。

「勉強をしようかと」
「どうして?」
「だって、特にすることもないです」

自分のことを顧みず仕事をする彼を見続けるのも、辛い。
だからといって何もしないのも嫌だ。

こちらの意を汲み取ったらしいLは、真顔で少し思案した後棚から本を取ってきた。

「なら、これでも読んでいてください」

渡されたのは、お菓子の本。
作れということか。

「それでは、私は仕事に戻ります」
「はい」

部屋に戻るLをちらりと見てから、本を開いた。

「……?」

説明に含まれる単語の意味が分からなかったので、作ってみるのはやめにした。
再び本を開くのは、それから一ヵ月後である。







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