いくら落ち込んでも仕方ない。前向きに生きていくしかないんだ。
殺されなかった、しかも父様のことも探してくれる。
私は充分幸せだ。

「色々任せちまってるのに、悪いな」
「いえ、お世話になっていますし、何でもやります!」
「…そうか」

屯所での生活にようやく慣れたころ、私は土方さんに呼び出された。
叱られるんじゃないかと思ったけれど、向かった先にいたのは苦難の表情を浮かべたその人。

「高橋っつー隊士が一人いる。そいつが女だっていうのは、お前も知ってるよな?」
「は、はい」

廊下で何度かすれ違った程度だけれど、唯一の女性ということで記憶に残っていた。
前を見据える瞳が凛々しくて、強い人なんだと思った。
だから、土方さんからの頼みは予想外で、部屋を出た後も戸惑いを抑えられなかった。

『あいつも色々あって、無理矢理新選組に入った。素質はあるから戦力に入れたが、どうにも危なっかしくてな……』
『誰かが傍で支えてやれればいいんだが、生憎俺達は警戒されちまってる。警戒っつか…心を許せない相手になってる』
『表向きは、高橋がお前の面倒を見ることにする。……傍にいてやってくれねぇか』




傍にいる。
私なんかに務まるだろうか。逆に嫌われてしまうかもしれない。
そう思いながら高橋さんの後ろを歩く。空気が重くて、嫌がられているのは明確だ。
仲良くなれるのだろうか。
そのとき、吐き出すような声が前方から投げられた。

「別に嫌いじゃないよ」

良かった。思わず声に出てしまい、羞恥で熱が顔に集まる。幸い彼女は呟きに気づいていないようだった。


きっと大丈夫だ。やっていける。



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