なんで私が見張り…じゃなくて、面倒見なきゃいけないんだ?
身の回りのことも出来ない幼子ならともかく、相手はもう輿入れしてもおかしくない娘さんだ。

……ああ、そうか。年頃の娘の側に男をつけとくのは良くない。

「だから私かぁ、あふ」

欠伸を噛み殺し、ついてくる少女を見やった。
不安そうな顔。多分私に嫌われてると思ってるんだろう。
流石に可哀想だと思ったので、一言かけた。

「別に嫌いじゃないよ」

勢い良く顔を上げた雪村さんは、驚いた顔をした後満面の笑みを浮かべた。
うん、若いね。

「良かった…」

呟きには反応しない。
これ以上会話が続けば、互いの傷だか悩みだかに触れてしまう。ような気がする。
私は、女といっても数年間男衆の中で生き抜いてきた女だ。細やかな気配りなんて出来るはずもない。
雪村さんはうっかりしているところがあるし、聞いてはいけないことを質問したり、話しちゃ駄目なことを言ってしまったりするかもしれない。

……こんなに会話し難い相手は初めてだ。

「あの、高橋さん、これから私何をすれば…」

申し訳なさそうに話す雪村さんは、もう女の子にしか見えない。
…何をすれば?

「……あ」

やっべえ副長に聞き忘れた。
面倒見るって何すればいいんだ?

「えー…っと、自分の部屋で待機。」
「わかりました。」

聞いてこなきゃ……いけないよね。
やっぱり、こういうの面倒くさい。

少女に背を向け、来た道を戻る。

忍び寄る影に気づくことは出来なかった。



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