見た瞬間から違和感は生まれ、纏わりついて離れなかった。
確かに他の志願者より活力は無かったけれど、それだけじゃないなにかが違和感を発している。刀なんて持ったことなさそうな手で竹刀を握ったその人間、名前は高橋 悠。なんとなく気に入らなかった。

「嫌われちゃったなあ」

自分を視界に入れた途端分かりやすく歪む表情。一瞬でいつもの顔に戻ったけれど、眉間の皺は寄ったままだった。
どうしてあの子が千鶴ちゃんを知ってたのかなんて、とうの昔に知っていた。
土方さんに「千鶴に高橋を任せようと思ってるんだが」なんて言われて、多少は渋ったものの結局了承した。新選組のためだから仕方ない。

女だからといって手加減はしない。こんなところに入るくらいだから、相当な覚悟をしてきていると思ったのに。許せない。新選組を、近藤さんを馬鹿にされた気がした。
固い決意があれば文句は無い。あれだけ追い詰めれば答えがでる。あの子は逃げようとした。逃げようとしたのに、

「そろそろ皆と仲良くしてくれなちゃ、いざという時困るんだけど」

羅刹なんて馬鹿な実験やめればいいと、初めて強く思った。最終的に半端な覚悟のままここまできてしまったあの子。才能はあるから殺すのは勿体無い?覚悟が無ければそんなの塵同然だ。才能の有無なんて関係ない。


足早に去っていく彼女を見つめ、歩き出す。暇だし鍛錬にでも行こう。




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