「水蒸気の塊に身を投げて、彼女は一体どうしたかったんだろうねえ」
「寝たかったんじゃないかい?」
少し肌寒い日々が始まり、彼女の噂はだんだんと無くなっていきました。
それでも時折思い出したように、ぽつんと話題に出たりします。
「ねぇ菊、どう思う?」
「わ、私ですか?」
ああ、困りました。私は少々自分の意見を出すのが苦手なのです。それを知って聞いてくるフェリシアーノ君はたちが悪い。いえ、嫌いではありませんよ。むしろ、仲良くさせて頂きたいと考えています。
「菊が思っていることを言えばいいんだぞ。」
思っていること。なんとお答えすべきでしょうか。
わかりません。あまり知らない方のことに意見するのは良くないのではないか、とは思っていますが。
……いえ、まったく存じないと言えば嘘になります。
彼女が消える一年前、少しだけお話したことがありました。
片手で足りる数でしたが、たくさんのことを話しました。その中には、彼らの疑問の答えも混ざっています。
教えるべきではないとは、重々承知しています。
そして、教えるほど彼らに関わる理由ではないのです。
憶えているのは、彼女の黒髪と震える瞼。
そして、