ふう、と息を吐いた。
「菊、元気ないねぇ」
「え?」
くるんと長い髪の毛が揺れ、丸い瞳が私を覗き込む。
いつも陽気なフェリシアーノくんが、不安げな顔をしています。……そんなに落ち込んでいたでしょうか?
「そんなことありませんよ。」
「そう…かなぁ」
腑に落ちないといった口調で再び歩き出した彼は、先ほどの私と同じようにため息をつきました。
「なんかあったら、言ってね。俺……菊の友達だし」
「…ありがとうございます」
彼の背中は寂しげです。
私としたことが、数少ない友人に心配させてしまうとは。
私自身落ち込んではいません。フェリシアーノくんが気にかけることなど何もないのです。
ただ……少し驚くことがありました。
深夜。いつものように、ネットで新作ゲームの情報を探します。なかなか良さそうなものは無いなとため息をついた矢先、
「えっ……」
沢山の文字の羅列、パッケージがずらりと並んだ端の端。
とても小さい写真ですが、見間違うことはありません。
『幻葬』と称されたそのゲームには、苗字さんが写っていました。
セミロングの黒髪に、模範的なスカートの丈。なにより、ストーリーが彼女であることを示しています。
『物置部屋の奥で、少女と過ごす不思議な時間。―――貴方は誰と恋をする?』
恋……美少女ゲーム、ですか。
ほとんど無意識にそれを予約し、PCを消して布団に潜り込みました。
彼女と過ごしたあの放課後はなんだったのだろう。
夢ではない。現にあの手紙は引き出しにある。
分からないことだらけです。重いため息をついて、瞼を閉じました。
これが、彼女が死んでから二ヶ月後の話。