男の幼馴染の紬から告白なるものを受けてしまった。


「宏人。俺たち付き合おっか。」

「…、うん、いいよ。僕、紬のこと好きだし。」

「どっちかなあ…。」


紬は苦笑いを浮かべる。



紬はサッカー部。僕は帰宅部。
だから僕は紬の部活が終わるまで教室で待っている。

月白色のカーテンが風に揺られる。
カーテンとカーテンの差し込む日差しが心地よい。

グラウンドから各部活の応援や指示の声が聞こえてくる。
自然とそれが子守唄になっていた。


一人だけの教室に小さな寝息がかすかに響き渡る。


「あれ、寝てる。」


真ん中側の席から窓際に席替えして静かに眠っている恋人を静かに眺めた。

日が落ち始め空は暁に染まり始める。夕日の光が宏人の顔を照らしていた。
普段気づかないが、宏人の髪は光で照らすと茶髪になる。

普段は髪を染めた周りの連中の中にいて綺麗な黒髪だと言われているが、光を当てれば本来の茶髪が出てくる。


「…、ん?」


ゆっくり宏人が目を開ける。


「あ、起こしちゃった?」

「部活は?」

「俺ら2年だしサボってもバレねえよ。」


その言葉を聞いて宏人はムッとした。その表情が胸にぐさり。と刺さる。


「紬はもっと部活に関心を持ってよ
「戻るわ。」


宏人は首を縦に振った。


「じゃあ、さ…….。」


教室に静かに響くリップ音。

宏人は顔を真っ赤にしていた。


ふいに廊下から足音が聞こえた。ふたりの距離がサッと開く。


勢いよくぶち開けられたドア。

俺を呼びに来たであろうクラスメイトで


「あーっ!紬見っけた!!あ!宏人もいるやっほ!つかお前ら仲いいな!」

「お前本当うるせえわ。今行く。じゃあ、後でな宏人。」

「うん、いってら。」


宏人は引き出しから出したであろう本を広げていた。



帰り道。


「今日はびっくりしたね。」

「え、あ?」

「白木くん。」

「あ、あいつねー」


紬はストローを加えながら答えた。


「ねえ、僕らバレたらどうなるのかな」

「いじめられるかもな。」

「それは辛いなあ。」

「死にたくなる?」

「紬と一緒ならいいかもしれないね。」

「へぇ、でもさ。そんなこと簡単に言っていいの?」

「は…」


言いかけた瞬間、紬の手が自分の首に飛んできてゆっくりと喉仏を押す。
すごい力だ、力が抜けそうになる。


「はは…。ねえ紬、これどういう状況?」

「宏人も俺の首絞めてよ。」

「ばーか。力入んねぇわ。」


ゆっくりと紬の首に手をやる。
ぎゅっと手に力を込めた瞬間。ふっと紬が笑って息苦しさが消えた。


「ごめん。宏人」

「あれっ、今の心中じゃなかったの」

「俺らまだ死ぬ歳じゃねえなって思って。」

「なんだそれ。」


くだらなすぎて逆に笑えてくる。



「まあ、死ぬときはふたり一緒で。」

「どうせ、お前からは死んでも離れられないんだろ。」


胸元の開いたポロシャツは今の時期にはやっぱり寒かった。



赤い糸で心中しましょうか。