「ねえ。どこ行くの?」
久しぶりに会った悠真は半ば強引に俺を引き連れ、車に乗せた。
悠真から“今お前ん家の前。ちょっと出かけようよ”そう連絡が来たのはほんの数分前。今日が休日で俺は特に用事もなく家にいたから良かったけれど、いなかったらどうしていたのだろう。
「どこ行くんだよ。」
もう一度同じ質問をする。
「海」
ぽつりとこぼれるかのように彼は答える。なんで突然海なんかに、なんて考えてるうちにもうすぐだから。と声をかけられる。
海に着き、微かに残っている夕日の光で美しく色付く海の見える場所に悠真が腰掛ける。潮風が気持ちいい。 俺も少し距離を開け隣に座る。
「突然押しかけて悪かった。」
「別にきにすんなよ。何も予定なかったから。」
こうやって二人だけの場所で会って話すのは学生以来だな。と思い出していると
「どうしてもお前には一番に伝えたいことがあって。」
悠真がそう口を開く。ピリッとした緊張が走る。
「俺、来月結婚する。」
「そっか。おめでとう」
俺にはただそう返すことしかできない。
なぜ素直に喜べないのだろう。 俺たちの“そういう関係”は学生のあいだにもう終わった。こんな生産性のない関係は終わりにしよう。と自ら告げて終わりにしたはずなのに、どうして。割り切れていなかった?まさか。そんなはずあるわけない、あってはならない。
「そんな辛気臭い顔すんなよ。俺はお前に一番に直接伝えたかったんだ。」
「そう。」
彼のまっすぐな瞳に見つめられる。
「俺はやっぱりお前のことが好きな気持ちは変わってない。だけど、ちゃんと大事したいと思う人ができたんだ。」
「うん。」
「俺がこんなこと言うの良くないのはわかるけど、お前にも幸せになって欲しい。」
「ホントなんでお前に言われなきゃいけないわけ」
ふ、と笑みがこぼれる。
もう少しだけ、今だけでいいからこいつを独り占めさせてください。秋の夜の星空に祈る。二人の間を通り抜けるように少し強い風が吹いた。潮の匂いに混ざる甘い香りがした。
この香り知ってる。
tittle:さよならの惑星
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