チームワーク
「あーちゃんっ!」
「ハイッ!」
あーちゃんがレシーブしたボールは綺麗にセッターの位置にいる徹の元へ行く。
最初は誰を使うか…
まぁ様子見だよな最初は…
「金田一」
キュッ
試合開始、最初のトスは勇ちゃんに上がる。
上がった場所はネットのど真ん中。
向こう側には相手が2人、ブロックをしようと構えている。
グワッと勇ちゃんが腕を振りかぶる。
相手が同時に膝を曲げてジャンプをするが…
ダンッ!
ピッ
「ブロックが甘いな…」
少しビビってる。
勇ちゃんが打ったスパイクは相手の1人の方の指にかすり、コートへと入った
。
【1-0】
「ナイス勇ちゃん!」
「ありがとうございます!」
勇ちゃんは嬉しそうに笑った後、チラリとひーちゃんの方向へ向く。
『ナイス金田一!!その調子!!』
「は、はい!!」
あ、勇ちゃん顔隠したけど今絶対ニヤけてる。
「ハルどこ見てんだよ」
「んー?人間観察」
「…なんだそれ…。
相手校、どうだと思う」
「どうって…まだ始まったばかりだぞ…」
でも……
あの7番(森久)…気になるな…
最初の位置が前衛の真ん中だから…
「セッターか…」
あいつだけ目付きが違う。
目の色が違うんだ。
「要注意だな…」
***
「ご、ごめん!!ブロック出来なかった!!」
金田一のスパイクが指にかすったブロッカーが言う。
「いいっていいって…別に期待してなかったし!」
その言葉にセッターの森久は、にしし、と笑い飛ばす。
「ひ、ひっでー!」
「そうだお前ら…」
「なんだよ改まって…」
「なんだ森久、急に」
「俺たちは弱いよ」
「「「……!」」」
「青葉城西。東北の方ではかなり有名な学校だって聞いた。
よく見てみればあっちのセッターよく月バレ載ってるし。
たぶん…てか、絶対…俺は……あのセッターみたいに上手くトス出来ない」
「………」
「海常バレー部が強かったのは2年前。今は頑張って市で上位ぐらいだ。
でも俺はセッターだ。
スパイカーにトスを上げる事が仕事…。
だから俺はトスをあげる。あのセッターよりは…う、上手くないけど…っ」
森久は自分の言動にどんどん自信が無くなり、声が小さくなっていく。
「わかってる」
「え…?」
「わかってるよ。
俺たちは駒だ。そしてお前はプレイヤー。
いつもそうだろ…?
俺たちを操作するのはお前だ」
「!!!」
「ほら、
ゲームをしよう」
(森久さんもっと自信自信!)
(あるって…自信!)
(かっこいいのか、カッコ悪いのかわからないよ)
(ひどい!!)