後日談





「及川先輩、はい」

「ひーちゃん、あーんって言ってよー!」



えっ…めんど…。

でもやんないとめんどくさ川が戻ってくるよなぁ。



「はぁ…仕方ないですね」

「やったー!」

「ひーちゃん、無理しないでも…」



大丈夫ですよ春斗先輩。男にあーんってするくらい、大丈夫ですよ大丈夫。いけますって。大丈夫。うん大丈夫。



「いーなー及川センパイー!飛空っちのあーん。ずっりぃー!!!」

「ふふん。いいだろー!」

「ほらこっち向いて下さい及川先輩」

「はい!」

「……一」

「…あぁ」



及川先輩の分のケーキがのっている皿を持つ。

一口でギリギリ入るくらいの大きさのケーキをフォークにとって、満面の笑みを浮かべる残念な先輩の口元に…



「及川先輩、あーうわっ!?」

「あー…ブフゥ!?」

「おっと…」

「おいおい岩ちゃん急によろめいてどうした」

「いや、なんか身体から力抜けてよ。悪いな蓮浦」

「いっいえ!」

「岩泉、ほんと大丈夫か?」

「俺、水持ってきましょうか?」

「頼む」



……いやいやいや、皆さんその前に



「及川先輩大丈夫ですか?」

「…………ハル!岩ちゃん!」

「お?」

「あ?」

「今の、ワザとでしょ!!!なんてことしてくれてんのさ!!!折角のひーちゃんのあーんを!!!」

「ワザとなわけないよなぁ?」

「あぁ」

「嘘でしょそれ絶対嘘でしょ!!!」



ビシッとかっこ良く決めてるつもりだろうけど、及川先輩。

内容が残念な上に、顔にケーキの生クリームとかが付いてますからね。まぁ付けたのは俺なんですけど。

ちなみに、お皿に乗ってたケーキもですよ。フォークの分だけじゃありません。

…ほら、ついに涼太くんが笑いを堪えきれなくなった。



「センパイの顔っ…!!!」

「黄瀬、見るな」

「さりげなく酷いね笠松くん!」

「正しい判断だな」

「あぁ」

「二人とも!」

「…あ、徹。もったいないからそれ食べろよ?」

「はい?!」



は、春斗先輩…いくらなんでもそれは酷ってもんじゃ…。



「いや、ほとんど下に落ちてないし」

「だな」

「えー…!」

「なんだ徹。俺の作ったケーキ、食べられないってか?」



うおお…春斗先輩今日すごい。なんかすごいぞ…。



「そういうわけじゃないよ!!?」

「ならいいだろ」

「はいけってー」

「うう…」



さすがにご愁傷様だなー及川先輩。と思っていたら隣からつつかれる。

なんですか春斗先輩。



「ひーちゃん見てたら俺もやりたくなってきた」

「はい?」

「てことで食べろ」



………ちょっと待って春斗先輩。今日どうしたんですか。何かあったんですか!?



「ほーらひーちゃん、あーん」



どうやら決定権はないらしい。


うう…自分がやられると恥ずかしい…よくもこんなのをやってほしいと言ったな及川先輩…。さすが残メンだよ…。


春斗先輩によって口に突っ込まれたケーキを咀嚼する。


美味しい。美味しいんだけど複雑な気持ち…。


悶々としていたら名を呼ばれた。はい?と返事をして上を向いた。



「ひーちゃん、生クリーム付いてる」

「え、どこですか」

「ここ」



…………む?



「ひーちゃんその顔可愛いよ」

「ハル何やってくれてるの俺のひーちゃんに!!!」

「お前のじゃないけど」

「及川先輩のじゃないですよ…」



及川先輩のとかない。マジないから。

…て、ちょっと待った。今春斗先輩、何を…した……?



「…っえ!!?え?!!」

「ふふっ…ほんとひーちゃんは可愛いなぁ」



唇の端っこに生クリーム付いてたからとっただけだよ俺?



「春斗、暴走すんな」

「影山でも暴走することあるんだな…」

「…今度黒子っちに使ってみよう…うまくいけるかもしんない…」

「ハル!ダメったらダメ!!!」

「うるさいなぁ」

「………」

「ひーちゃん?」



…春斗先輩、その雰囲気………アウト、アウトですからね!!?

親指でぺろって…何!!?色っぽいよ!!?

影山もそのうちできるよう…いや、そうなったら影山じゃなくなる。あの単細胞で可愛い影山じゃなくなる…。

でも春斗先輩の弟だから因子はもっているんじゃ…。



「ひーちゃんの百面相可愛いなぁ」

「……」

「あ、徹。写メ禁止」

「ええ!!?」

「たりめーだろ。アホかてめぇは」

「黄瀬もだぞ」

「えー…せっかく飛空っち待受にしようと」

「凉太くんそれはさすがにやめて!!?恥ずかしい!!!」

「あ、元に戻った」



先輩こそ、あの雰囲気掻き消えてますよ。いつもの優しそうな雰囲気に戻ってますよ…。


及川先輩じゃなく、春斗先輩でもこんなこと(暴走)があるんだなぁとしみじみ思いながら自分の分のケーキをつついた。


でもですね、正直心臓にあまりよろしくないので、あまりやらないで下さいね、先輩。…まぁ、春斗先輩に限ってよくやる、なんてことはないだろうけど。




砂糖とミルクをたっぷりと入れてもらったコーヒーを飲みながら、飛空は目の前で今だにぎゃーぎゃーやっている二人に目をやりながら思った。



(徹、うるさい)
(ハルがひーちゃんに手を出すから悪いんでしょ!!!)
(人聞き悪いこと言うな!手なんて出してないわ!)
(あれのどこが出してないっていうのさ!!?)


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