男だらけの? 6






ま、まんぷく…。

もう食べられ…いや、デザートなら別腹で…!



そう思いながら周りを見ると、涼太くんだけ死んでる。

18歳組はケロリとして談笑している。年の功ってやつ?違うか。



「涼太くん生きてる?死んでる?」

「……」

「りょーたくーん…」



…反応しましょうよ。なんか寂しいじゃん。

反応がなかったので、暫くの間、りょーたくーんと呼びながら頬をピシピシと突ついていると、



「…ひーちゃん」

「はい?」

「黄瀬多分意識あるぜ?」

「何ですと!?」



思わず涼太くんの頬に埋めていた指に力が入る。

結果



「イタい!!!イタいっス飛空っち!!!」

「ごめんつい!!!…て、起きてるじゃん!!!」

「あ……」

「「「ほらな」」」

「へへん。ひーちゃんを独り占めしようとした罰だよ!ねーひーちゃん!」

「及川先輩暑いです引っ付かないでください」

「えー……てかノンブレスで言わないでよひーちゃん。傷付くー…」

「いや、ひーちゃんは正しい判断しただけだし」

「てめぇに引っ付かれるとか蓮浦可愛そ過ぎんだろ」

「黄瀬と同レベル」

「笠松くん?!!」

「ちょっとキャプテンそれどういう意味っすか!!?」

「どういう意味もこういう意味も…」

「あ、ストップ。言わないで。聞いたら絶対悲しくなるから」



涼太くんと同レベルかー……それはいくらなん……いや、合っている。合っているか。

及川先輩のスキンシップは涼太くんと同レベル…。むしろそれ以上?

うわー…納得。

すごく納得できた。

てか及川先輩は涼太くんよりベタベタしてくる分たち悪い。

そんなところが女の子にモテるんですか、及川先輩。

俺じゃなくて女の子にやってあげましょうよ。女の子に。



「………飛空」

「なんですか春斗先輩?」

「あー…その、な?それ以上言うと徹立ち直れなくなるからやめたげて?」

「えっ?」



お、おれ口に出してた?!



「きれいに全部。な?」

「あぁ」

「あそこまで言われると、な…」

「センパイ…」

「……あー…」

「徹はここね」



俺の背中。



「あー…先輩すみません…」

「俺は慣れてるからいいけどな?こいつ彼女ちゃんにフラれるといっつもこうだし」



及川先輩、彼女さんにフラれると春斗先輩の背中にへばりつくらしい。

新情報ゲット…じゃなくて、



「及川先輩ー悪気があったわけじゃないんです。ただ本心が」

「飛空、それ抉ってる。なおさら抉ってる」

「その春斗の言葉が俺の心を抉ってます」

「ごめん徹」



うわーこれほんとのナーバスモードってやつ?珍しいなぁ。

どーしましょ、と周りに視線をやると、岩泉先輩が息を軽く吐いた。



「おいクズ川。今すぐその辛気臭い顔を元通りにしたら蓮浦がケーキ一口食べさせ…」

「ほんと…!?」



はっや。立ち直りはっや。

てか、それだけで…及川先輩マジでなんなの…。

食べさせてあげるくらいなら、うん。まぁいいかな。とは思うけど、及川先輩の反応は…ねぇ…。



「ひーちゃん。それが及川徹という生き物だ」

「そのようですね」

「岩泉…お前、やっぱ苦労してんな…」

「んなのお互い様だろ笠松」

「何の話っスか?」

「何の話?」

「「はぁ…」」



お疲れさん、二人とも。

春斗先輩が、顔でそう言ったのがよくわかった。

いや、春斗先輩も十分お疲れ様ですよ?

及川先輩の相手とか及川先輩の相手とか及川先輩の相手とか及川先輩の……以下略。



自分でも知らないうちに手が伸びていた。

その先、指に触れるものは



「飛空?」



春斗先輩の髪の毛。

先輩のすごく驚いたような、戸惑った顔が目に入る。

その顔に何かを刺激され、そのまま春斗先輩の髪の毛を気が済むまでわしゃわしゃと撫でた。

途中、ハルずるい!って声が聞こえてきたけど無視無視。あとでケーキ食べさせてあげるんだからいいでしょ。

気が済んで指をそこから除けた瞬間、手を掴まれる。



「春斗先輩?」

「…ひーちゃん、あんまり無防備だと、襲われるよ?」

「え?」



春斗先輩が言葉を発するまですごく真面目な雰囲気をしていたのに、それを言った瞬間は何というか、うん、その、色っぽかった。

思わず、え?ってなるくらいには。

でも、俺がえ?って言った後には、もうそんな雰囲気は掻き消えていて、いつもの優しげなそれを纏っていた。



「…さて、食器片付けて終いのケーキにいくぞー!」

「やったーケーキ!!!」

「俺、仕事でもらった有名店の紅茶持ってきたっス!」

「おお!ありがとな!」

「俺これ持ってくか」

「んじゃ俺はこれだな」



ちゃくちゃくと片付いていくテーブル、その近くで、俺はただ突っ立っていた。

頭の中で反芻する春斗先輩の言葉と戦っていた。







(別に変な意味は込めてないんだけど)
(変な意味でも込めたかのように思われちゃったかねぇ)

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