男だらけの?5
「おお…!」
鶏だ!!!鶏がいる!!!しかも丸鶏!!!
キッチンにあるオーブンのそばにいくと、キッチンに入ってから漂っていたいい匂いがとても強く匂う。
匂いだけでなく、オーブンの中にある鶏にすごく興奮する。こんがりと焼けてそうで…ジュワジュワしてそうで…つまり、美味しそう。早く食べたい。
キッチンに入ってからずっとオーブンの中を凝視している俺に春斗先輩から声が掛かる。
「穴があくほど見つめてどうするのひーちゃん」
いや、だってすごく美味しそうじゃないですか。凝視する以外に何かできますか。
目線でそう訴えると、春斗先輩の下がっていた眦がさらに下がったのがわかった。
まったく…ひーちゃんは可愛いなぁ…と言いながら頭をくしゃくしゃと撫でられた。
え…なんでそうなるの先輩…。俺可愛いことなんて何も…?
ひとしきり俺の頭を撫でて満足したのか、春斗先輩の手が離れた。
「さてと、そろそろだな」
オーブンは残り1分を指している。
「ひーちゃん、そのお皿取ってくれるか」
「あ、はい!」
「ん。ありがと。悪いけど、少しの間持っててくれ」
「了解です!」
支持されたお皿には小さく千切ったレタスが乗っている。お皿の近くには洗ったミニトマトと、ニンジンの…たぶんグラッセ?が置いてあったので、おそらく丸鶏をお皿に乗っけた後にでも乗せるのだろう。
なんて思っていると、焼けたことを知らせる音が鳴った。それと同時に春斗先輩がオーブンの取手を開ける。
さっきまでとは比べ物にならないほど強烈な匂いが鼻に押し寄せる。鶏やハーブ等の香辛料の匂いが、それはもう。
「乗っけるぞー」
「はーい」
まずは丸鶏。次いで回りにあったジャガイモや玉ねぎを乗せる。
手早く、だが綺麗に盛り付けていく先輩の手を俺は黙って見つめていた。
すごいよ先輩…。
「っし。あとはプチトマトとニンジンのグラッセを添えれば完成と」
「おお!」
「もうちょっと待ってくれよひーちゃん」
待ちますよ美味しいもの食べられるなら!
春斗先輩がニンジンとかを盛り付けているのを眺めていたら、不意にリビングの方から大きな音がした。
「何か向こう騒がしいな」
「及川先輩が何かやらかしているんじゃないですか?」
「それしかないな」
あ、涼太くんもかな。たぶんだけど…。
及川先輩とどことなく似ているし、中身が。
岩泉先輩と笠松先輩も、苦労人てとこで。
取り敢えず、二人に叱られたんだろうなー。
「じゃあ、ひーちゃんチキン持って行って。俺は包丁とか持っていくからさ」
「はい!」
ニンジンとかを乗せるために、一度置いたお皿を持つ。かなり重い。
そりゃそうだ。色々と乗ってるもん。
「笠松先輩ー、岩泉先輩ー、おバカさん達は放っておいて、チキン食べましょー!」
「「おバカさん達?!!」」
「おう」
「てか、すげぇなそれ…影山がやったんだよな?」
「どういうこと!ねぇ!」
「センパイ否定してくれないんスか?!」
「もちろん。切り分けるから少し待ってくれ」
「あぁ」
「春斗先輩!俺、そこのふっくらしているとこ欲しいです!!!」
「はいよ。ちょっと待ってな」
「無視しないで!お願いだから!!!」
「反省してるっスよ!!!」
「あ、ハル、俺そこがいい」
「おっけー。幸ちゃんはどこがいい?」
「じゃあ、そこ貰えるか」
「了解!」
「お願いだからー!!!」
「無視しないでくださいっス!」
(ハル!!!)
(…はぁ。アホなことは大概にしとけよ?)
(うん!)
(ほら。…金髪くんも)
(センパイ…!)
(うお!!?おい、くっ付くな!!!離れろ!!!)
((((離れろ))))
(は、はいっス…)