逃走
『す、すごい…』
すごい良い試合だった…
見て分かるほどに海常が劣勢だったのに、諦めないで最後まで。
そしてすごく楽しんでやってた
今、海常のチームは泣いたり笑いあったりして、
『俺もあの時…』
あの時、あの事故の時。
逃げなければ。逃げないで、最後まで戦っていたら。
俺もこんな試合が出来ただろうか。
『………』
「ひーちゃんどうしたの!?暗い顔して!!?」
「徹うるさい。
……なんかあったか…?」
『い、いえ…なんでもないです…
あ!!試合おつかれさまです!!タオルとドリンクどうぞ!!!』
「ありがと、ひーちゃん」
「ありがとな、
なんか悩み事があったら言えよ?」
そういいながら、春斗先輩は俺の頭をくしゃっと撫でる。
俺はどうしたらいいかわからなくて、
『ど、ドリンク多く作りすぎちゃったので海常のチームにも配ってきます!!!』
「「え、」」
及川先輩に他のメンバーのボトルとタオルを預けて、春斗先輩の顔も見ないまま逃げてしまった。
***
「ひーちゃん…?」
「………」
「ハルなんか手ぇ出した?」
俺はじっと、徹を見つめる。
「無言やめて!?こわい!!」
お前その言葉じゃ語弊があるっつの…。
「おい、お前らミーティングするぞ!!」
「はーい!あ、岩ちゃんこのボトルとタオルみんなに渡して〜!」
「おう、蓮浦は?」
「海常にドリンク配りに行った。余ったんだとさ」
「なに岩ちゃん。ひーちゃんにボトル渡されたかった?俺は渡されました!!」
「及川うぜ!ハル行くぞ!!!」
「おう、行こうぜー」
いつもと同じ様に嗚咽を吐いてる徹は放置して。
(はぁ…)
(心配かけちゃったなあ)