セッター
【22-14】
「ス、スイマセン!!」
前衛だった金田一が謝る。
「いいって気にすんな……って言ったらダメだけど…
ほんと小技が多いな…」
一回目の海常の攻撃。
相手は1人時間差を使ってきた…
セッターだけじゃない…
その1人時間差に、前衛の金田一と…及川先輩が引っかかってしまった。
「クソ川お前まで引っかかるなよ…油断してただろ」
「してないしっ!
まさかあそこで使ってくるなんて…!
普通あんな小技持ってるなら序盤から使ってくるでしょ…」
及川先輩がぶつぶつ言う。
「ぶつぶつ言うな。
終わったこと悔やんでもどうにもならないだろ。
ほら次のサーブ。一本で切るぞ!」
***
「キク落ち着いていけよ」
「う、うん…」
できれば今のうちに点を一点でも多く稼ぎたい。
次に点を取られてしまったら、サーブはかなりの頻度で月バレに特集されているあの及川徹だ。
言い方は悪いが、たぶん手を抜いてる。
サーブが取れないとでも思ったのだろう。
そしたら試合が始まらないとか…
「………クソッ」
ピィイ!!
背後でボールをダッダッと付いてる音が聞こえる。
ドッ!
いつものサーブより高さが低い。
ガッとネットに当たる。やばい…!
「あっ…!!」
だけどボールは運良く相手のコートに入った。
「徹!!!」
「わかってるってば!!!!」
片手でドッとボールをあげる。
待て…あいつはセッターだ…
「あいつが1回目触った…誰が次…!!」
「わたっち!!!」
「……っ」
リベロ!!?
リベロにはセッタープレイが禁止っていうルールが…!!
「い、いや…違う…あのリベロはコート内を熟知して…!」
「森久!!!」
「え…」
バシンッ
時間差で髪の毛がふわりと浮く。
なにが起きた。なにが起きたんだ。
「春斗先輩!!」
「ハルナイス!」
「いやいや、わたっちナイストス。相変わらず、すごいな!」
「そんなことないです!先輩がすごいんですよ!!」
今決めたのは…
「影山春斗…」
どのポジションも完璧にこなすっていう…
あの及川徹と同じくらい有名だ…
確か弟がいるんだっけ…
【23-14】
「………」
あと2点か…
「あと…2点…あと2点……」
やだなぁ。
正直なんで青葉城西と練習試合をするのかがわからなかった。
強かったのは前の話で。俺たちはあれから全国に行けてない。
予選敗退なのに…
「森久…」
「…大丈夫」
次のサーブは及川徹…
(あと)
(何分コートに立っていられるだろうか)