なんて呼ぶ?
――校門前
「あ、いるいる」
笠松くんや金髪くんと話をしながら校門へ向かうと、そこにはもう三人がいた。
「待たせたな」
「きっかり一時間。さすが春斗先輩です!」
「マジで?やった」
そのままひーちゃんとひとしきり話した後、笠松くんと金髪くんの方に向き直った。
「紹介するよ。左から、烏野高校バレーボール部所属の…」
「蓮浦飛空です!試合、見てて凄く面白かったです」
「その右が、うちの青葉城西のバレーボール部副主将の…」
「岩泉一だ。宜しく頼む」
「最後に、うちの青葉城西のバレーボール部主将の…」
「及川徹だよ☆好きなものはひーちゃんとひーちゃんとひーちゃ……」
「「いきなり相手が引くような事言うな!!」」
「ッター!…二人して頭をはたかないでよ〜。あっ勿論ハルの事も岩ちゃんの事も大好きだよ?」
「「………」」
「す、すみません。及川先輩っていつもあんな感じで…」
「…なんとなく既視感を覚えるんだが…」
「えっ…どこがっスか?」
「…てめぇにはぜったい分かんねぇよ」
「…心中お察しします」
お互いの苦悩が露になった瞬間と言えばいいのだろうか。
「お互い様だな…」
「…ホントに何がっスか?」
「……はぁ…」
…………
「…そう言えば、自己紹介まだったよな。海常高校バスケットボール部主将の笠松幸男だ。宜しく頼む」
「1年の黄瀬涼太っス。ヨロシク!!」
「宜しくお願いします。…えっと笠松先輩と涼太くん、て呼んでいいですか?」
「構わないぜ。…蓮浦って呼んでいいか?」
「俺は飛空くんって呼んでいいスか?」
「オーケーです!」
お互いどう呼ぶか決定。
春斗先輩達はどうするのかと思い、後ろを見た。
「っわ……春斗先輩、驚かせないで下さいよ」
「悪い。驚かせるつもりはなかったんだ。話に入るタイミングを狙っていたらこうなってな」
「そうでしたか。…ところで岩泉先輩と及川先輩は」
「ちょっと岩ちゃんからのお説教が…。まだ言い足りない事があるみたいでな」
「あー…」
「て事で先に行こう」
「二人とも場所は分かってるのか?」
「大丈夫だ。前に一緒に行った事がある」
「なら大丈夫だな」
「あぁ。…ところで笠松くん」
「ん?」
「あだ名で呼んでもいいか?」
「………は?」
「いや、仲良くなりたいもしくはなれた人とはあだ名で呼び合うっていう習慣がついていてさ。…駄目か?」
「まぁいいが…」
「じゃあ、…幸ちゃんって呼んでいいか?」
「…………」
…春斗先輩。いきなり過ぎませんかそれは…。
「…は、春斗先輩…まだ初対面に近い方に、それはちょっと…」
「あー、やっぱ駄目か…」
心なしかしょんぼりしてしまった先輩に、ちょっとだけ罪悪感を覚える。
「…ん……ぜ」
「え?」
「べ、別に呼び方それでもいいぜ」
「マジでいいの」
「あぁ」
「さんきゅ。じゃあ、幸ちゃん。改めて宜しくな!」
「こっちこそ宜しく頼む」
「あのっ!!」
「何だ金髪くん」
「黄瀬涼太っスって」
「君のあだ名はもうこれ確定だから、いまさら…」
「それあだ名だったんスか?!」
「あぁ」
あれ?涼太くん打ち拉がれてない?…というか、春斗先輩、涼太くんの反応見て楽しんで…。
何が春斗先輩のいたずら心(?)を刺激してしまったのだろうかと思いながら、涼太くんに声を掛けた。
「…涼太くん大丈夫?」
「…飛空くん…!!」
「ゴメン。そんな期待のこもった目で見られても、俺にはあだ名を変える事はできないんだ…」
「そういう事だ。諦めろ」
「ヒドいっス!!」
…及川先輩より邪気がない分、多少ウザくても涼太くんは可愛いと思います。
それに、あの…えと、犬に見つめられている感じがするから、憎めないというか何というか…。
そんな感じで会話を進めていたら、いつの間にか着いていた。
「春斗先輩、ここですか!!」
声が上ずったのが自分でも分かった。
「あぁ。外観の雰囲気いいだろ?」
「はい!」
「確かに洒落ている店だな」
「そうっスね!」
――カラコロッ
春斗先輩を先頭にして、店内に入る。内装も洒落ていて、思わず感嘆の声が漏れた。
そして
「やっと来た〜。全く遅いよ四人とも!」
なんて声をあげる及川先輩と、それを呆れた目で見る岩泉先輩がいた。
「おー、思ったより早かったな」
「裏道使った☆」
「そーかそーか。…一、満足したか?」
「ここ一年分は発散した」
「それは何よりっと。…で、どう座る?」
「勿論ひーちゃんは俺の…」
「ひーちゃん、俺の隣に座るか?」
「いいんですか!?」
「来い来い」
「やった!」
「平然と無視しないで!!」
「黄瀬、どうする?」
「俺はセンパイの横ならどこでもいいっスよ!」
「…………そうか」
「何スかその沈黙?!」