本気って?
「気を引き締めていくぞ!!」
「「「「うス!!!!」」」」
「とことんやろーぜ!!!!」
「「「「おう!!!!」」」」
――観戦組
「…春斗先輩の眼の色が変わりましたね」
「ハルが?珍しいね…」
「アイツが本気を出すなんて、いつ以来だ?」
「う〜ん……ごめん岩ちゃん。憶えてない」
「お前が憶えてないのなら、かなり昔だな」
「…まぁ、力の自制ができなかった頃じゃない?考えられるとしたら」
「三年は前か」
「てかさ、岩ちゃん」
「ああ、クズ川」
「「ハル、力の出し方忘れてたよね/よな」」
「わ、忘れてた?」
ひーちゃんが驚くのも無理はない。その前に、ハルの本気すら知らないのだから。
「その前にひーちゃん。ひーちゃんは、ハルの本気知らないよね?」
「まあ…」
「簡単に言うと」
「言うと?」
“凄まじい”
「…ほんとですか」
「あぁ。強大過ぎて、ハルの体がついていけてなかった。…まぁ、今なら楽々できるだろうがな。ハルは日々を無為に過ごしてなんかなかったからよ」
「…でも、今の体力じゃちょっと、ねぇ?」
「そうだな……最後らへんに出すか、それとも出し方を思い出せずに終わるかだな」
「まぁ、そんな情けない事したら」
「「お説教☆/シバくか」」
「…もっと穏便にいきましょうよ」
“穏便に”なんて言われても、さ。本気の出し方を忘れてたならまだしも、ついさっきまで、自分が本気じゃない事にも気付いてなかったんだからね!
…岩ちゃんがハルをシバくなんて言ってるの初めて聞いたけど、まぁ…仕方ないよね!!
「…岩泉先輩。及川先輩がにやついていて気持ち悪いんですけど」
「放っておけ」
「はい」
…相変わらず二人とも、俺に対してヒドいよね!!
「ヒドいなぁまったく…。…それはそうと、海常の黄瀬クン、随分と苦労しているみたいだね」
「確かに、かなり消耗してそうですね金髪くん」
「ハルのは1Qで模倣できるほど簡単じゃねぇよ……アイツが本気かどうか関係なしにな」
「同意。言葉では上手く言い表せないけどね」
ハルのは模倣しにくい、というのに特に明確な根拠はない。
ただ直感的に感じるのだ。
“やりにくい”だろうと。
「…まぁ、仮に終盤に完璧に模倣されたとしても、ひーちゃんのお願いは聞いてくれるよ、ハルは」
「えっ…?」
「“ダンク”見たいんでしょ?」
「…はい、でも…」
「ハルは絶対やるぞ蓮浦」
「なんたって後輩は全員俺の弟、みたいに思っているからね」
「可愛い弟のお願いを聞かない兄に、アイツが見えるか?」
「見えません」
そーいう事、と心の中で呟く。
結局の所、模倣されようが、体力を消耗しようが、可愛い後輩の頼みのためなら、そんな事には構わない。
今、自分がどうしたら後輩の頼みをきいてあげれるかを第一として動く。残りの体力や技術と相談しながら、最善の道を探し、実行する。
それが、影山春斗という人間だ。
だから
「今回は無理だったとか、なしだからね?」