お互い様




…………



「…ハルって案外抜けてるよな」

「…否定できないね。…ひーちゃんはどう思う?」

「たまに抜けてる事ありますよね…春斗先輩」


はぁっ……。

三人そろって、息を吐いた。


「…まぁ、チームの誰かが教えてくれるんじゃない?」







――春斗




時間となり、コートへと戻る。




「…マジかよ」


あからさまな陣形。

俺と黄瀬を中心とするそれ。

さっき、チームメイトに言われた言葉がよみがえる。

早速、か…。


「…簡単には模倣させないからな、金髪くん」

「!!…やってみせるっスよ」


目の前の金髪くんに

“やってみろ”

そうと言わんばかりの表情を作った。




…俺になれたら、拍手喝采してやるよ。







ピーッ


第3Q終了の笛。


「っはぁ、はぁっ…」


あ"ーキツい。1Qだけでこんなに消耗するとは思ってなかった。


…伊達に何回もIH行ってないってか。


金髪くんにしても、笠松くんにしても、あの集中力は凄い。サーブのときの徹並みだ。


徹底的にマークされていた性で、まだダンクができていない。

ボールを十数発、適当に打ったのしか入ってない。


「はぁはぁっ……クソッ」


ベンチに座りながら両手を組んで、力を込めて握った。

自分の今の残っている体力を鑑みると、ダンクはできて一回。最悪できないかもしれない。

ひーちゃんのリクエストに応えるためにも慎重にやらなくてはな。







――海常組




「はぁっ…はぁっ…」


黄瀬の消耗が思ったよりも激しい。


「…黄瀬どうだ」

「…あの人、すっげぇ掴み…ヅラいっス」

「つまり、まだか」

「はいっス…てか、完成する気がしないんスよ、これ」


この言葉に、思わず森山達も黄瀬に視線を送る。

完成する気がしない、とは?

俺は聞いた。お前が模倣できない理由がわからなかったから。

元々、黄瀬が自らよりハイレベルな事は模倣できない事は知っている。今回はそれにあたるのか?


「…どういう事だ黄瀬」


それに、呼吸を落ち着かせた黄瀬は答えた。


「アノ人独特のリズムが、俺には無理なのかもしれないんス。…理解ができない」




ハイレベルな訳ではなく

“理解不能”

か…。




「そうか。…監督」

「…あまりネガティブ的なのは好きではないが、この点差を守る事に集中しろ。いいな!!」

「「「「「うス!!!!」」」」」







――春斗




「…ハル」

「何だ」

「最後は思いっきりやれよ?」

「……は?やってんだろ」

「いつもの八割しか出てないと思うんだけど俺達は……なぁ?」


口々に、そうだとか、そうですよという言葉を言いだす。


「…ウソだろ。俺、全力を出せてないのか?」

「そう言ってるだろーが!後輩にいいとこ見せたいんなら、ぐだぐだ考えずに本能でやれよ」




何も、考えずに……



何かはわからないが、身体の奥底から湧き上がってくるものがあった。



…これ、か?




「……たとえ、十割出せたとしても倒れたら終わりだから、最後まで取っとく」

「それでもいいさ」


その後、お前等集まれー!!と、バスケ部の主将がメンバーを呼ぶ。

そして


「最後まで全力で行くぞー!!」

「「「「おー!!!!」」」」


円陣を組んで言った。


皆の眼に、再び強い光が宿る。






さぁ、最後の戦といこうじゃないか。





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