ウォーミングアップ




ピーッという笛の音が、後半戦の開始を告げる。





「…取り敢えず、ウォーミングアップといきますか」







――笠松




来たか。取り敢えず流れは変えさせない程度に…


「なっ…」

「…へ?」





時間が止まったようであった。






ダンダンダンッ――



音をたてずに、ボールはリングへと吸い込まれていった。

残ったのは、リングを通過したボールが、体育館の床に叩きつけられたときの音と体育館内の静寂……そして


「…あ"ー、やっぱ鈍ってるな」


という影山(メンバーチェンジの際に知った)の声だった。





背中を汗が伝う。





今日の黄瀬は、最近の無理がたたって、本調子ではない。



…マズいな。



影山を止めきれるだろうか分からない。

そんな俺に、追い討ちをかけるように、静寂で満ちていた体育館に興奮した声が響いた。


「春斗先輩!!ハーフコートのラインからなんて凄いです!!」

「おー、ありがとうひーちゃん」

「先輩、ダンクみたいですダンクッ!!」

「できたらな?…取り敢えず試合中は集中したいから…」

「岩泉先輩とおしゃべりしながら見てます!!」

「宜しい。クズ川はほかっといていいからな?」

「はい!!」

「扱い雑だよっ」

「頑張って下さい!!」

「あぁ!」

「無視っ?!」

「うるせぇクズ川!」




……何なんだこのコント…。



話を終えた影山が、くるりと反転しこちらを見た。


「ボール、そっちからじゃないのか?」

「お、おぉ。…悪い」

「いやいや。こっちこそ試合中なのにしゃべっていて悪かった」



この会話を皮切りに、再び時間は動き出した。



影山を抑える方法を模索しながら、俺も動き出した。






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