分かった





――春斗




……さて、どうしたものか。



ボールをドリブルさせながら、考える。

相手の海常は、生半可なものが通じる相手ではない。

頭の中で色々と考え、シミュレーションしてみるが、どれもピンとこない。



…こんなのじゃ駄目だ。もっと裏を掻くような…。





頭と反対に身体は動く。


3Pが決まった。


相手の悔しがる声や次を見る声などが聞こえてくる。

だが、あくまでそれらは聞こえてくるだけ。脳までは浸透してこない。

耳から耳へと通過しているだけだ。





……何も浮かんでこない。こんな事これまで一度もなかったのに。



その心の動揺が身体に出てしまったらしい。一瞬の隙を突かれてボールの主導権を奪われた。

奪われたボールは、すぐに金髪くんに回り、彼は3Pを打とうとした。






「…点はやりたくないからな」




身体は金髪くんのモーション中に追い付いた。

驚愕している顔が間近にある。



…何だ。簡単じゃないか、本気になるのなんて。



残り時間をちらりと見た。



残りあと1分



…イケるな。



そう確信した俺は、一瞬だけ眼を閉じた。





一瞬の後、再び開かれた眼には、感情が一切込められてなかった。









――笠松




空気がピンと張り詰めたのが分かった。



…原因はコイツ、か。



影山をちらりと見やった。

眼から顔から、表情という表情が抜けていた。


「…あと1分か」


この1分が、とてつもなく大事だ。だから俺は声を上げる。


「ラスト1分!!大切にいくぞ!!!!」

「「「「うス!!!!」」」」




次の一点は、こっちが取る!





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -