…マジすか
――海常組
笛の音とともに、インターバルに入る。
ベンチに座って、配られたタオルを頭に乗せる。それと同時に配られたドリンクを、少々俯きながら飲んだ。
辺りには、荒い息の音とドリンクをストローで啜る音が響いている。
「…ふぅ」
「センパイ」
「何だ黄瀬」
「ここ、以外に強いっスね」
「…昔はIH常連校だったし、まぁ強くてもおかしくないだろ」
「そうなんスか!?」
「あぁ、…十数年くらい前までの話だがな」
「知らなかったっス…」
「俺等が、まだまともに話せねぇ頃の話だからな。知らなくても無理はない」
「だとしても、現IH常連校としてこの点数差は…」
「…最近、また強くなり始めたらしい」
「何かあったんスかね」
「…お前のような化け物が入ってたとしたら…」
「だったらもっと騒がれているっスよ。化け物なんて言われるくらいなら」
「それもそうだな…」
黄瀬にそう返しながら、俺は顔を上げて、先程と同じ方を見た。
……アイツは違うのだろうか。
ふとそんな考えが頭をもたげた。
そして、そんな俺の考えを肯定するかのような出来事が目の前で起こった。
――春斗&飛空
「…ん?」
「春斗先輩、なんか呼ばれてません?」
階下から、声が聞こえた。
「どうした?」
「悪いハル。試合出てくんね?」
「はぁ?なんで」
「2年の奴が足捻っちまってさー」
「他の面子はどーした」
「補習に引っ掛かってんだよ…」
「あ"ー。何やってんだアイツ等」
「今度シバいていいから、頼む!お前にしか頼めねぇんだ!」
…マジすか。今日は見るだけの予定だったんだがな。ひーちゃんいるし…。
「春斗先輩、バスケも出来るんですか?!」
「えっ、あ…」
「ハルはスポーツ万能だからねぇ」
「確かサッカーもそれなりに…」
「余計な事を口走るな二人とも!!」
何口走ってくれてんだ二人とも!
横からのひーちゃんの視線が余計にキラキラし始めたじゃないか…。
…ひーちゃんにその視線向けられると、俺弱いんだよ…。
「春斗先輩!!」
「…はい、何ですかひーちゃん」
「春斗先輩がバスケしてるとこ見たいです!!」
…ひーちゃんのリクエスト入りました。
こんな可愛い後輩のリクエストを聞かなかったら、全国のお姉様方に殺される気がする……。
「ハールー?」
「……(ポンッ」
「先輩!!」
「…分かった。やるよ」
「サンキュー、ハル!!」
「頑張って下さい!」
「頑張れよ」
「頑張ってねハル〜」
「…徹、明日の基礎練三倍な。覚悟しとけ」
「え、俺だけ?!岩ちゃんは!!」
「岩ちゃんにはいつも苦労をかけてるから、それでチャラ」
「日頃の行いの違いだクズ川」
「そんなぁ」
…じゃあ、行きますか。
「着替えたらそっち行く。審判の人に言っといてくれ」
「分かった。本当にありがとな」
「気にするな」
さてと、久々にバスケをしますか。
公式戦の助っ人は、ほぼ一年ぶりだろうか…。
そんな事を考えながら、俺は更衣室に向かった……後ろに熱い視線を受けながら。
――海常組
…まさか。
そう思った。だが、会話を耳を澄まして聞いた限り、そのようだ。
「おいおいマジかよ…」
そんな言葉が、口をついて出た。
「何かあったんスか?」
「…メンバーチェンジで、さっきの黒髪の方が出てくる」
「?!」
「どーいう事だ?」
頭の中に、疑問が沸き起こる。
―インターバル終了まで、あと5分