挑戦的宣言

それでも夏はやってくる



海常の勝利を見届け、監督の下に集まってる涼太を眺めてグラウンドに移動をする準備をする。
あ、笠松さんと目があった。会釈しとこう。

涼太に誘われて来た練習試合は海常の圧勝だった。青道のバスケ部には失礼だけど、やる意味はあるのかと思ったが反省を眺めてる限りだと長いし何か得るものがあったのだろう。

帝光の時と比べて涼太は変わった。いつもより笑うようになった。あの時と比べて楽しそうにバスケをするようになった。

それは海常というバスケ部の環境のおかげだろう。案内した時に見てた涼太と先輩の関係性に安心した。


「もしかして……黒子のおかげなのかな」



中学の時も黒子の話は多かったけど、前よりなんか増えた気がするし。


とりあえずグラウンド行くか









いつも野球部が練習しているグラウンドに着くと、ギャラリーがとても多い。
女の子も、父兄の人も地域の人も。青道の野球部すげえな、甲子園も行ったことあったんだっけ……。


どこか観やすいところがないかと歩き続けていれば、日陰のグラウンドを見渡せるいい場所。

「ここにしよう」

グラウンドに目を向けると丁度青道は試合を行っていて相手は修北というところ。うん、知らないわ、秀徳なら知ってるんだけどな。


青道は…一軍かな、あの捕手見たことがある気がする。
投手の人も良い球投げるなぁ、今時珍しい落差のあるカーブだ。カーブすら打ちづらいのにあんなに落差があるならな。

二遊間のコンビネーションも凄い。てかあれ………小湊先輩じゃ……

「やっぱ野球関係者か、怪しいと思った」


図書室で初のエンカウントから何度も来て、人にそんな関わらなそうな性格してるのにしつこく話しかけてきた。それも俺のことを知ろうとする質問ばかり。

きっと俺が鉢木ってのも気付いているんだろう、名前も知られているし。

「なんか、魔王っぽい性格」


攻守が変わり、青道が攻めになる。打線すごいな、やっぱ。なんかうるさい人もいるけど。

5回で修北0点で、青道は9点。
ここからどう試合すんのかな、そのまま流して消化試合にするか。練習試合というのを利用して何か新しい事を試すか。


視線を彷徨わせるとタイミングよく栄純と目があった。あっちも俺に気が付いたみたいで、目尻を吊り上げながらこっちに走ってやってくる。


「奏太!」

「お疲れ、抜けてきても大丈夫だったのか?」


見てる限りでは何も言わないでこっちに来たように見えたけど。

「ア"!!」

「後でなんか言われても知らねえからなー、俺関係ないし」

「うるせ!いつからいたんだよ!」

いつからって……グラウンドにきたのはついさっきだ。高みの見物とばかりに試合を観戦させてもらっていた。

「試合は出ないの?」

「今日は出させてもらえなそうなんだよ!クソう……俺が出ればここから更に点数を稼げたのに……!」

「やっぱ登板出来なかったのか」

「昨日は出た!!!昨日こいよ!」

「そんな無茶言うなって、ほら差し入れ」


昨日は出たのか、ちょっと栄純が立っているところを見たかったなと思いつつ紙袋を渡す。もちろん中身は例のアレだ。


「……え!いいのか!?」

「6月とはいえ、暑いからな。結構作ったから嫌じゃなければ他の人にも分けてやってな」

「おう!」

ニコニコ笑いながら蜂蜜漬けを口にする栄純を尻目に、試合を見るとカーブを投げてた人が今度はフォークを投げた。


「なあ、あの人が青道のエース?」

「ん?あぁ、丹波先輩か!……いや、青道のエースは俺だ!降谷とかノリ先輩とかいるけど青道のエースは……「ほんとは?」……エースだと思うぞ…いずれ俺が背番号奪うけど!」

「それは聞いてない」


なんか観てる限りキャッチャーと息が合ってないっていうかなんていうか……。


「キャッチャーはあの人だけ?」


どっかで……うーん……


「いや!師匠もいる!」

「師匠って度々出てくるよな……誰?」

「クリス先輩!滝川クリス……優!」

「栄純忘れてたっしょ」


クリス先輩ね……そういえば結構シニアで有名だった気がする。丸亀シニアだっけ、東京ではナンバーワン捕手だったような。
でも今はあのスポサンをかけてる人。


「なんか青道複雑そうだね」

「は?どういう事だ?」

「面白そうなチームだと思ったんだけどなーーうーん………あ、」



それは一瞬だった。

ザワザワと人が集まり担架が運ばれる。
顎に当たってしまった死球。硬球のスピードが乗った球はヘルメットまでも砕く。


「丹波先輩……!」


慌てて駆けつける栄純の背を眺め、俺は部外者だからと傍観を決め込む。


スポーツに怪我は付きもの。
そんなん分かってる。

わかってるけど………


「時間は待ってくれない、夏は嫌でもやってくる」




何処かで蝉の鳴く声が聞こえた気がした。







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