「来ちゃったっ」
早朝の4時。
いつもならまだ寝てる時間。
今日は涼太の試合を観に行くために早起きしようとしたけど、それよりももっと早い時間。
あれ約束は7時半に駅のはずなんだけど。
そもそも俺が単独で駅に向かうはずだったんだけど。
なんでインターホンが鳴って、こんな早朝に誰だよってイラつきながら玄関のドアを開けると涼太がいるの。
「何が来ちゃっただよもう〜〜〜」
「え?え?奏太??」
まだ寝たいのに!!くそ!
近所迷惑になるから入れ!!!もう!!
「で、なんでこんな朝早くから来たんですか」
ソファに座って早朝のニュースを半目で見ながら質問をぶつける。
「だって!だって!!中学卒業振りに会えることになったんスよ!?」
確かにそうだ。今日会ったのは卒業振り。
それ以降は涼太から電話があったり電話があったり電話があったりメールがあったりメールがあったり電話があったりメールがあったり、したが会うことはなかった。
今まできれいに予定が噛み合わなかったのだ。
だからって、だからって…!!
「あ!俺ホットミルク飲みたいかも!」
「こんな早朝から来てんだから少しは気を遣え!そんなシャレたもん作んねえから!」
えーーってぐう垂れるけどお前には水で充分だ!水好きなんだろ!!
「せっかく久しぶりにお兄ちゃんに会えたってのに!ヒドイッスねー」
「お兄ちゃんって数分の違いだろ、ちゃんとした兄ならこんな早朝にきません」
6時に起きる予定が……つか俺4時間しか寝てない…
「奏太を心配して来たのにー」
「どうせ駅で待ち合わせだっただろ」
「でも元気そうで良かった」
おい、スルーすんなよ。
流石はモデルって感じのスマイルで言われたけど、俺男だからね?効かないし
「なんか明るくなった気がする」
「ハァ!?」
明るくなった?俺が?元々俺明るいって。
「元々明るいとか思ってるっしょ…。奏太冷めてるッスよ。だって奏太壁作るじゃん、そこそこ喋る中になったら、その壁はなくなるけどさ」
お前それ人のこと言える?なんて思うけど、確かに否定は出来ない。
変なところが似てしまった。
「なんか俺寂しいッス。……やっぱ奏太も海常にくればよかったんスよ〜〜!!」
うわああん!なんて泣き出す涼太を放置し、少し早めの朝食を用意する。
「俺にも作って!!!」
さっきのは泣き真似かよ!というツッコミは心の中に秘める。
「お前朝食ここで食べるのが目的だろ」
「だって朝食手作りが食べたいじゃん!」
俺と涼太は高校に入るに辺り一人暮らしを始めた。
俺は軽い家事全般なら出来るけど涼太はまったくだもんな…まぁ、模倣すれば一発だろうけど、興味がないのかそんなことはしない。
「リクエストは受け付けないからな」
「奏太が作るならなんでもいいッス〜」
なんだそれ、と思ったが涼太の言葉に単純な俺は嬉々と朝食作りを始める。
今日は和食な気分だ。
メインはめんどくさいからご飯に卵と醤油添えとけばいいや。
味噌汁は時間あるし作るか、
かつお節にしよ、出汁とって取り除いたかつお節はフライパンで軽く炒めればふりかけになるし。
「奏太ー差し入れは何作ってくれんのー?」
「あ、」
「忘れてたんスか!?」
いや昨日の夜までは覚えてた!!
定番の蜂蜜づけでも作ろうかなって思ったし!!?
だらーと暇してる涼太にも手伝ってもらおう。
四等分に切ったレモン数個と一緒にまな板と包丁を持っていく。
「涼太これ5ミリぐらいに切って」
「え!?俺差し入れられる側!!」
「親族は関係ないです」
「ヒドッ!」
レモンと悪戦苦闘をしてる涼太を横目に、昨日買っといた蜂蜜をボールにありったけ搾り出す。
もう時期的に暑いし、サイダーも入れよう。
確か余ったやつが……あったあった
「ギャッ!目に入った!目がァ!」
「バカ…」
涼太にかまってちゃキリがない。作業作業。
蜂蜜とサイダーは混ざりづらいけど根性で混ぜてれば幾分かマシになる。
「涼太ー切れた?」
「切れたッスよもう!洗面所借りるからね!」
涼太から受け取ったレモンをさっきの混ぜた奴につけて冷蔵庫に入れる。
出るギリギリにタッパーに詰めればいい感じだろ。
合間に進めてた味噌汁もいい感じだ。
味噌汁碗に味噌汁をついで、他の物も用意していく。
「わっ!和食じゃん!朝食、和食とか久しぶりすぎ!」
「ご飯は逃げないから落ち着け」
写真取ろー!なんてそんな手抜き料理、いや料理とも言えないものに、はしゃがないでくれ。
「よし!奏太!手を合わせて!」
「はいはい」
「「いただきます!」」
長い長い1日が始まる。