「あ」
「?…どうしたの栄純君」
降谷と春っち、カネマールと東条そして狩場と昼ご飯を食べてたら思い出した。
御幸に言われたこと奏太に聞きに行かなきゃどやされるって。
「あ〜〜〜もう、今日何曜日だっけ」
「なんだ沢村、曜日まで忘れちまったのか?」
ニヤニヤしながら上げ足を取るカネマール。
「今日は水曜日だよ」
「水曜か!ありがとなあ、東条。どっかのカネマールとは大違いだぜ!」
「てめえ…!」
ボコスカ殴られてるけど今はそんなん気にしてられない。これより恐ろしいことが待っているかもしれないんだ。
えっと、水曜日は奏太は委員会だから…
「スマン!ちょっと用事思い出した!」
図書室だよな、あ、パン持ってこ。
「用事ってあれだよね、他のクラスの栄純君の仲良い友達の所」
「あ〜、顔だけ知ってるわ」
「え、金丸知ってるの?」
「合同体育で同じだからさ、なんかソイツずっと見学してっけど。でかいぜ身長。…降谷より」
「僕より大きいの…」
「え!すごいねえそれ!栄純君に行ってもなんだかんだ言って、紹介してくれないからなあ」
俺がいないところで、奏太と俺の事の会話が繰り広げられていることを知らずに。
▼▼▼
「奏太!」
────ガラッ
「あ、栄純」
図書室に行けば昼ご飯を食べてる奏太に遭遇。
こいつ案外緩いよな、飲食禁止とかそういうところに厳しそうなのに。
俺も倣ってパンと飲み物を広げると
「図書室は飲食禁止ですー」
「っなんでだよ!お前食べてんじゃん!」
「俺は本と距離取ってるからいいの、栄純の近く本たくさんあるだろ、だーめ」
図書室事態飲食禁止なんだけどな。
「勝手すぎんだろ!」
「カウンター入ってこいよ、中にテーブルあるからそこならいいぞ。どうせなんか用事あんだろ?いつも俺が委員会の時には来ないくせに来たんだから」
ズカズカとカウンターの中に入ったが、どうやら奏太にお見通しだったようだ。
「奏太さ、来週あいてる?」
「来週?」
「そう、9日から」
んー、と考えた素振りをした奏太は一拍置いて「あ、無理」とすぐに返事をする。
「だよなーーー」
「なんかあんのか?」
「合宿があんだよ」
ギリギリに一軍に上がれたことによって本格的に参加できる合宿。
それは6月9日から6月17日まで行われる合宿だった。ちなみに後半の2日間は練習試合。
「合宿ね、どっちにしろ無理だわ」
あーーこれは怒られるパターンか?
あ、でも御幸も…それにクリス先輩も奏太が見たいってだけだったよな、
なら練習試合にだけなら…
「じゃあ17日!練習試合あるんだよ!俺投げるかもしれねえから!」
「練習試合あんの?登板はかもだろ…でも17日かーー」
制服のポケットから携帯を取り出した奏太は、画面を見てぶつぶつと呟いた。
「17日ね、いいよ俺もここに長くいる用事あるし」
「ほんとか!?」
「うん」
え!!?マジ!!?断られると思った!
「朝から試合はしてると思うから!!」
「わかった昼から行くな」
「昼!?」
「朝からなら昼もやるだろ、つか野球部なんだから昼もやるべ、昼に行くな」
確かにそうだけど…!
「来たら声かけろよな!」
「おう」
「絶対だかんな!」
「おう」
「聞いてるか!?」
絶対聞いてねえなこいつ。
この時の俺はあんな騒ぎになるなんて思ってもいなかった。