月水金。
俺は週3で雷市にキャッチボールを教えるようになった。
キャッチボールをするようになってからは2週間が経つ。
キャッチボールの上達は置いといて……人見知りレベルMAXの雷市は俺と喋るのはまぁ慣れたみたいで話してくれるようになった。
「最初と比べると上手くなったな雷市」
「ほ、ほんとか!?」
「ほんとほんと」
最初は目も合わせられなくて雷市は暴投をしまくった。
キャッチボールの基本は最初から最後まで相手から視線を外さないことなのに。
「あとは体の軸だな。それはもう経験で身につけていくしかねえからなー」
「軸…」
「あ、あと捕球ミスもな。それあり得ねえから。普通のボールなんだからまずは取る。キャッチボールの捕球ミスからエラーに繋がったりするんだからな」
雷市の捕球ミスは多い。
体の正面でボールを取れていなく、グローブに弾かれたりしている。
「…雷蔵さんとキャッチボールとかしないの?」
「ジジイはいつもダラけながら見てるだけだ。バットを振れしか言わなかった」
あーー雷蔵さん言いそう。
俺は日陰で眠りこけている雷蔵さんを見る。
最初に雷市とキャッチボールした時は驚いた。ぜんぜん続かねえって。
雷蔵さんにどうしてきたのかって聞いたらバットを振らせてきたと返された。でもチームというものに入ったからには捕球が出来なきゃダメだということで、今回俺が教えることになったらしい。
雷蔵さんに今まで振らされてきた雷市のバッティング技術は結構すごかった。
軸は安定していてブレない。最初は驚いて唖然とした。
雷蔵さんが言うにバットに秘密があると知り、雷市が持っていたバットを持ったときは思わず雷市の顔を二度見。
いつから振ってんだよと思った。
「守備もちゃんと出来るようになったら雷市は大物になるかもな」
素直に思っていたことを言う。
実際試合してるところは見たことないからまた変わってくるかもしれないけど。
「エッ!」
その時。油断した一瞬。
暴投した雷市の球は俺の脚に当たった。
「…いッ!」
「奏太!?」
俺の方が焦りたいってのに、どうしよどうしよゴメンどうしよ、と慌てる雷市を見て反対に落ち着いてくる俺。
大丈夫。脚はまだ動く。
フーーッと息を荒く吐いてる間にいつの間に呼んだのか雷蔵さんがいた。
「大丈夫か、裾捲るぞ」
「いや、いい……っす…」
静止の一声も雷蔵さんが裾を捲る動きより遅くて、案の定器具の付いた脚が露わになる。
「…………奏太、」
「ごめん雷市俺帰るわ、また今度な」
雷蔵さんの手を捌けて逃げようとするが、球が重かったのか思ったよりも脚に激痛が走り上手く歩けない俺
最悪、
「うわっ」
ズシャア
足がもつれて顔面からダイブする俺。
「「……」」
笑ってくれよ…無言が一番心に刺さる。
「その……あのな」
「なんだよ!笑うなら笑えよ!!」
絶対今顔赤い。顔砂まみれだしなお恥ずかしい。
「ガハハッ!!家まで送ってく。雷市は右側支えてやれ」
くそっ…!
恥ずかしくて断りたくても帰るまでに何回顔面ダイブするかわからない。顔面的には被害を抑えるために着いてきてもらった方がいいはずだ。
雷蔵さんと雷市に左右を支えてもらいながら帰路に着く。
途中雷蔵さんに無駄にでけえよって理不尽に当たられて蹴られたのは送ってもらってるからということでなかったことにしよう。そうしよう。
マンションの下に着いた時。
雷蔵さんと雷市の口を大きく開けてるアホ面に笑った。