「春っち〜〜…とついでに降谷、みてくれよこれ!隣のクラスの奴に塗ってもらった!」
俺はにしし、と笑って両手を春っちと降谷に見せた。
「わあ、綺麗に塗れてる…よかったね栄純くん」
「ずるい…僕もあれから御幸先輩に貰ったけどぜんぜん綺麗に塗れなかった」
スッと見せてきた降谷の指先を見ると、なんつーの?ムラがあるっていうか…。
「その人誰、僕も塗って貰う」
「ダメだ!」
「なんで」
「…お、俺だけの特権だからだ!!」
何故か、降谷の事を奏太に紹介するのは嫌だった。そこから奏太が降谷の爪もケアするとかもっと嫌だ。
なんかこう、ムカムカする。
奏太に手を触られるのはすごく緊張した。すごく、すごく大事そうに手を取ってくる。こっちが恥ずかしくなるぐらい。塗られてる時、奏太の顔が近くに来てこいつ女なんじゃねえかって思った。
睫毛は俺より長くて無意識に手が出てたし、体育とか昼休みに奏太を見ると女子がキャーキャー悲鳴をあげてる理由がなんだかわかった。
「その人って女の子?」
「いや、男」
「名前は?」
「教えねえぞ降谷ァ!それで突撃するつもりだろ!」
なんでわかった、という顔をする降谷は分かりやすい。そんなんでエースが務まると思うな!
「最近金丸くんから昼休みになると栄純くんが何処かに走るって聞いてたんだけど、その人の所に言ってたんだね」
「な!カネマールが!?」
「うん、言ってたよ。栄純くんって顔が広いね」
そんなに隣のクラスに行ってたか…?と考えたけど、ここ毎日行ってるかもしれない。
あいつと話すのは楽しい。基本は俺が一方的に喋ってるだけだけど、あいつは適当に相槌をうってるが一応は話を聞いてくれている。
俺が野球の事で疑問があることを聞けば分かりやすく答えてくれるし……
「最近栄純くん楽しそうに見えたんだけどその人のおかげなのかもね」
クス、と笑う春っちはお兄さんに似ていると思う。春っちに言うとすごい勢いで否定するだろうから言わないけど。
楽しいか…