逃亡  [ 16/31 ]


ギクッ。


「また、飛空さんとバレー出きるんですよね…。
ポジションはどこですか?やっぱエース…スーパーエースとか…

「………、」

「でも飛空さんポジション基本どこでも出きるッスよね…。
で、…どこなんですか?」



空気が沈黙に包まれる。



「おい飛空…」



龍が小声で耳に話し掛けてくる。


「お前…話してねえの?」

「う、うん…」



それは俺がマネージャーをやってること。
選手としてじゃなくマネージャー。

俺はまた跳ぶのが怖いから逃げてマネージャーをやっている。
大地先輩には深く話してないけど、なんとか分かってもらえてる。

龍にはしつこいから話すしかなかったけど。



「飛空さん?」

「………う…」

「俺…飛空さんにトスだして、打ってもらいたいんス。
もしかして…!!」

「……ちがっ」



「まだ治ってないんスか…?」




違う。治ってる。治ってるんだ。ただ怖いから逃げてるだけ。
また、あの時のように動けるのか。
あの時のように、走れるのか。

あのときのように跳んで、スパイクが打てるのか。



「違う…逃げてるだけ…」




(逃げてるだけ)

  



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