06
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「梓乃ッ!」
真に名前を叫ばれハッとする。
大丈夫、足は動く。大丈夫、いける。
「真!!あとで合流しよう!私なら大丈夫!武器探してくるから!」
「ハァ!?せめて場所ぐらい…!」
「ここの地形詳しくないんだからわからないって!バカ!」
捨て台詞を吐き捨て走り出す。ガシャン、と人体模型が動き出すような音がした。
「バカってなんだよあの破天荒野郎!!!!!」
「花宮さん落ち着いてください」
「おい!梓乃ちゃん1人で行っちゃったぞ!?いいのか!?」
人体模型は梓乃を追いかけてしまったため廊下は閑散としていた。森山は外れてしまった扉の場所から頭を出して走って行ってしまった方向を見つめる。
「まぁあいつなら……大丈夫だろ」
「なんだよその間は!!?」
「…心配なら梓乃を追いかければいいじゃないですかァ?」
騒がしくなった森山を邪険に思い憎たらしく言う。
「……俺は行くからな!?」
「ハッ!?」
「森山センパイ!?」「おい森山!」と海常のメンバーから心配する声があがるが、その声が聞こえていないのか、それとも聞こえない振りをしているのか梓乃を追いかけて教室から出てしまった。
「俺も行こうかな」
そしてその後ろ姿を追いかける奴がもう1人。
「室ちん!?」
「さっきの見ててわかったけど、物理攻撃が効くようだからね」
「ふざけんなよ氷室!あいつだけがたまたま効いただけで他の化物は効かないかもしれないんだぞ!!?」
「でも彼女を1人にするなんて男としてダメだろう?それに俺も武器が欲しい」
ニッコリと氷室は微笑んだ。その笑顔を見た人は腕をさする。
「分かりました。但し眞山さんと森山さんと必ず合流してください。集合場所は……職員室にしましょう」
「あぁわかった。必ず2人を連れて行くよ」
敦迷惑をかけちゃダメだよ、そう一言残しその場の全員に手を振り梓乃と森山が走って行った方へ掛けて行った。
「………拠点を変えましょう。ここは扉を壊してしまいましたし」
「はぁ……拠点は集合場所の職員室にするのか?」
「そうしたいですが職員室の様子次第ですね」
「俺は保健室でもええと思うでー」
「今吉サン…」
今吉の発言に花宮は口元を引きつらせる。今吉の発言に引きつらせたのではなく、あの今吉が、あの今まで黙っていた今吉が発言したのだ。
「あの子はいつも面白いねんなァ花宮。こんなピンチの時の助っ人をあの女の子にしたんや何か策があるんやろ?」
胡散臭い笑みを浮かべる今吉。
その笑みには誰もが口元を引きつらせた。
「あいつは無駄な知識があるんでそれを利用しようと思ったんですよ。アンタも知ってるでしょ。」
「知らんわそんなこと。花宮の幼馴染って事しか知らないで。俺が近付こうとしても花宮が…ナァ?」
謎の空気を出してるその2人の会話を聞き青峰が「サトリには誰も近づきたくねえよな…」と愚痴を零す。
「なんか言ったかァ?青峰」
「…言ってねえよ。それよりなんで保健室なんだよ」
「そんなんもしもの場合を過程してや。もしも誰かが転んで怪我をしたら?もしも誰かが喧嘩をして喧嘩をしたら?もしも誰かが……何かに襲われて大怪我したら?
使えるもんがあるか分からへんけど持ってても邪魔ってことはないやろ」
"誰かが何かに襲われて大怪我をしたら"
それは誰もが考えないようにしてたことだった。頭の片隅では思ってた。化け物は俺たちを殺そうとしてくる。それは遊びじゃない。ほんとに怪我をするのかも死ぬのかも分からない。考えたくもなかった。
「最悪の可能性……」
沈黙が数秒落ちた。
「ではその意見も入れて、ここにいる人達で2班作りましょう。保健室探索組と職員室直行組です。拠点は鍵、使えるかもしれない連絡する物がある職員室にします」
赤司の凛とした声がその場に響く。
「絶対にここから脱出しましょう」
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