05
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「あーーほんとだーー」
「ねー、肩軽くなったかも」
「息苦しくないような」
ファブリー図のこと先輩って呼ぼうかな。効果絶大すぎるでしょ。
「ねーねー」
「ふぁに?」
「袋にさーお菓子入ってたでしょー?俺にちょうだい?」
プリン美味しいな、将来はプリンと結婚しようかなと決意してる時に紫色の髪型をした彼が話しかけてきた。
「えーーっと紫原くん」
「うん」
「お菓子欲しいの?」
「うん」
「ポッキーとかしかないよ?」
もともとゲームするお供に買ったものだ。ポテチとかでもよかったけど、油で指べたついてコントローラー触ったら汚れるし、ポッキーとかそういうのしか買ってない。
「いいよー食べれるお菓子ならなんでも」
「じゃあはい」
極細と書かれたポッキーを手渡す。
「ありがとー」
「どういたしましてー」
お菓子好きなのかな。なんか気が合いそうな…
「お菓子好きなのー?」
「うん、普段はポテチとかまいう棒も食べるよ」
「ほんと!?」
ちょっと目をキラキラ輝かせながら確認してくる紫原くん。ゲームやらない時は結構なんでも食べる。お菓子は大好きだ。一番好きなのはラッキーターン。あの粉美味しいよね。
「そこで世界作るなバカ。そんな菓子食ったら豚になるぞ」
「動くときは動くからいいんですゥー」
「ハ?万年ニートが何言ってんのか」
「ニートじゃないし!!!!」
部活の助っ人に来いって言われたら行くよ!?バリバリ働くよ!?貢献するよ!!?にしても、あの鼻につく笑い方がウザい。ウザすぎる。
「話を進めていいかな?」
背中に冷たい汗が流れる。何あの視線で殺されるような感じ。
「ごっごめん…私からいい始めたのに、えっと地図作りたいからどういう道を通って何があったかとか教えてほしいかなー…なんて…」
一気に向く視線は怖い。精神的に病んでしまうぞこれ。
「あぁ、それなら僕がもうやった。君を呼ぶ前に出来ることは手を尽くしたんだ」
「真ちゃん的に言うと人事を尽くしたって奴〜?」
この場に似合わないテンションの持ち主が楽しそうにいう。
「煩いのだよ高尾」
「え〜ごめんって!」
「地図を見るかい?」
もちろん見ます。
赤司くんから渡された地図にはまだ空白の所があるが、校内の地図が出来るだけ詳しく書かれていた。このパソコン教室はPCAっていうんだ、それで2階だと。
「部屋にあるバツは入れないところだ」
バツが入れないところ……結構あるな……
「この星はなに?」
地図を見せながら赤司くんに問う。星の記号が廊下であるだろう場所に書かれていた。
「それは……化け物だ」
「化け物なんているのか」
厄介だな…簡単には脱出させてもらえそうにない。人体模型とかならなんとかなると思うんだけど…。
「化け物のエンカウントは避けたいな…。開かない教室を開けるための鍵の入手は…職員室、あと此処について最低限の情報…図書室、武器の調達に技術室に体育倉庫って感じかな…」
「なんかお前手慣れてんな…」
「手慣れてるとかやめてよ。こんなん手慣れたくないわ」
妙に感心してくる真を睨む。
「でも落ち着いてるよねー、俺此処に来た時結構焦ったし」
「焦りね…。みなさんは教室でそれぞれ目覚めたんでしたっけ」
1人で目覚める場合もあれば2人、3人で目覚める場合もあるらしい。
「私も同じタイミングで此処に来たら同じように焦るよ。でも此処に来た時は知り合いじゃないけど人は大勢いるし、状況も教えてくれたじゃん。それだけで充分落ち着けるよ」
だから私も同じタイミングで1人で目覚めたりなんかしたらすごい焦ってたと思う。
この変な所に連れて来られたのが意図的だとしたらすごく嫌だな。そいつの思惑通りになってるのか…。
「とりあえず探索しよう。私この教室から出たいな」
「探索ってお前、この部屋のドアが開かなくて閉じ込められて詰んでるから助っ人呼んだんだぞ」
「ほんとにちゃんと手を尽くした?扉ガチャガチャやって終わりとか、教室で鍵を探して終わりじゃないよね?」
真は何も答えない。無言は肯定と受け取る。
「力尽くでも開けなきゃ」
扉の前に行き。廊下の景色を伺う。おお…まだ人体模型いるわ…ホラーすぎる…でも立ってる場所が引き戸の奥の方。これなら……
脚を引き勢いを付けて強く扉を蹴りつける。
ガァンッ!!!
扉は重力に従って倒れていく。
人体模型を下敷きにして。
「よっしゃ探索行こ」
「「「「…………」」」」
ありえねえ…なんて声が聞こえるがあり得なくない。武力行使だよ。あり得なくないから!!あり得なく…ない…うん。
とりあえず人体模型にここで動かれても困るから倒れた扉の上に乗っとこう。
「お、お前…どこに立ってるだよ…!」
確か…紫原くんと同じ学校の福井さんがドン引きしたように言う。
「うわあああ!扉から血が…!!キモッ!リアルすぎないッスか!!?つかホンモノ!?」
あー…扉踏む時グシャッて聞こえたからなー…。ちょっと臓器も見えてたし…それが…
「うわっちょっと揺らすなよ…!」
扉の下でモゾモゾと揺れる人体模型。思わず扉から降りてしまう。
下敷きになった人体模型はのし掛かった扉をどける。
そして倒れたまま視線を、目玉を、ギョロッと向けた。
「…………ッ」
人体模型は手を使わず脚の脚力で立ち上がろうとする。そもそも人体模型に脚力なんてあるのはおかしいが。その姿に恐怖を感じた。背筋が冷たくなった。
「ボ…クノ…ゾウキ…!!」
"僕の臓器"…?私がさっき不可抗力で潰してしまった…臓器…?
意味が分からなくその場に立ち止まってしまう。その間にも人体模型の手は伸びてくる。
「梓乃ッ!!」
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