中等部生と再会


昼休み、俺は友人たちと中庭に出向いて居た。
それは昼食をとるためであり、俺に続いてベンチへ腰かけた日吉の希望によることだった。
なんでも人混みは得意でないらしい。まあ、らしいといえばらしいか。


「…何笑ってんだ鳳。」
「え、あ、何でもないよ。良い天気だなと思って、」


流石に不自然な誤魔化し方だったかと日吉の顔を窺おうとすれば「それもそうだな」と空を見上げていた。いつも気難しそうにしている彼の顔が、少しだけ和らいだような気がした。
ふと視線をずらせば、向こう側に腰かけていた樺地も静かに空を見上げていて。

なんだか平和な光景に微笑ましく思っていた、その時だ。


「それだ!」


突然女性の声が聞こえて、俺は大げさに肩を揺らしてしまう。
俺ほどわかりやすくは反応しなかったものの、樺地や日吉も驚いたのは同じようで、周囲に居た生徒たちもまた、声のした方へ視線をやっていた。

続いて俺も其方を見やれば案外当人は近くに居たようで、お団子頭の女子生徒の姿が確認できた。どうやら傍にはあとふたり、友人らしき女子生徒がいるよう。

…ふと、それが見知った顔に見え、思わず目を見開く。

人違い、なのだろう。
彼女は氷帝生では無かったし、此処に居るはずはないのだから。
そう思い目を逸らそうとすれば、気になっていた人物が此方を向いた。
俺の視線は未だ驚いた様子の彼女に向けられたままで。つまりは目が合ってしまったのだ。


「長太郎くん…!」


少し距離はあったけれど、確かにそう言った。
紡がれたのは俺の名前。この呼び方は、もしかしなくても。


「愛実さん、」


俺がそう呟いたころには、彼女は既に確信していて、微笑みながら手を振ってくれていた。
それから傍らのふたりに何やら声をかけ、此方へ駆け寄ってきた。


「長太郎くん、そういえば氷帝生だって言ってたわね!驚いた、」
「俺もですよ、まさか愛実さんが氷帝の高等部に進学してただなんて…、」


再会を喜び合っていれば、隣りから日吉が「あの、」と口を開いた。


「貴女は鳳とはどういった関係ですか?」
「ああ、親同士が友人なのよ。だから、2人して小さいころから何度か会っているの。」
「へぇ、だからお互い名前知ってたんだね〜」


と、気づけば先程のお団子の女子生徒。愛実先輩のご友人ということは、彼女も先輩だろう。
後ろからは少し癖毛がちな女子生徒がおずおずと此方を窺っていた。

その手にはお弁当があり、愛実さんはそれを見て一緒に食べようかと提案した。
俺と、恐らく樺地はどちらでも構わないのだけれど、日吉はどうだろうか。

そんな俺の心情を察してなのか、彼は呆れたようにため息をひとつ。


「久々に会ったんだろ、…好きにすればいい。」


紡がれた言葉は予想と反するそれで、
しかし俺には素直にうれしいその言葉に喜んで甘えることにしたのだった。


「決まりね、それじゃあ食べましょうか。」




日だまりに包まれて、
(微笑む貴女はやはり美しかった)













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