折琴さんとお昼休み


「愛実ー、友加梨連れてきたよ。」
「早くお弁当食べよー!」


昼休みの始まりを告げるチャイムが鳴って数分、
私のクラス、――もとい、1−Aの教室には春菜や友加梨の姿があった。

氷帝学園には“レストラン”と呼ぶにふさわしいほどの広さと設備を持つ食堂があるのだけれど、高校からこの学校に通うことになった私たち3人としては馴染めるはずもなく。そんなわけで、こうして一緒に食べることとなったのだ。

名前を呼ばれた私は持参したお弁当と財布を鞄から取り出し、ふたりの元へ向かった。


「今日もあの場所で食べるでしょ?」
「そうね、結局あの場所が一番落ち着く気がするわ。」
「食堂も教室も、人がたくさんだもんね…。」


先に歩きだした友加梨の後を追いながら、彼女の言葉に頷く。
「あそこ」とは中庭のこと。普段は中等部、高等部の生徒を中心に出入りが多く、無駄な広さを持っている割には人口密度は高い。けれど、氷帝生のほとんどがぁの豪華絢爛な食堂を利用しているため、この時間帯には比較的すごしやすくなっているのだった。

いつものように中庭へ出てみると、春菜が小さく声をもらし、続いて柔らかく笑みを浮かべたのが見えた。向こうに見える花壇だろう。そこには色鮮やかなチューリップの花が並んでいて、花好きな彼女でなくても微笑ましくなるような光景だ。

暫く行くと大きな木が見える。傍にあるベンチに座れば程よい日のぬくもりが感じられる穴場であり、昨日昼食をとった際に見つけた場所だ。

人が座っていないのに安堵し3人で腰掛けると、友加梨が思い出したように口を開く。


「ねね、新入生の入部届けの提出期限、もうすぐだよね。」
「そういえばそうね。」


ほかの学校がどうなのかは知らないけれど、この学園では生徒全員の部活所属が義務付けられている。とは言えそれは一時的なもので、先輩の中には帰宅部の人もたくさんいるみたいだけど。


「うちはまだどこに入るか決めてないんだよねー、」
「え、陸上部には入らないの?」
「ん、まあ色々あってさ。ふたりはもう決まってんの?」


空を見上げ返答する友加梨。

彼女は中学時代には陸上部に所属していて、此方の学校に転校してきてすぐ、全国へ進出していたっけ。
もともとずば抜けた才能があったみたいだから、私もなんとなく、陸上部に入るのだろうと思っていた。

春菜がなにかあったのか聞きたげな表情を浮かべていたけれど、
誤魔化そうと浮かべた苦笑いで、聞いてはいけないのだと悟る。


「…私は、春菜と男子テニス部のマネージャーになるつもりよ。」
「え、ふたりとも?なにそれ聞いてないよ―!」
「ご、ごめんね…。てっきり友加梨は陸上部に入るものだって思ってて…!」


困らせるといけないって思ったんだけど…、と俯く春菜。
と、そんな様子を見て慌てて首を横に振る友加梨。なんだか、首が飛んでいきそうな勢いね。


「わ、わ!ごめんそんなつもりで言ったんじゃなくって!」
「でも友加梨のこと誘わなかったし…」


まあ、もう部活動に参加してるとは言え仮入部期間なわけだし、今から入ることだって辞めることだって簡単なのよね。

私が小さくつぶやけば、「それだ!」と勢いよく友加梨が立ち上がる。
これには私も春菜も唖然。

そしてぐっと拳を握りしめた彼女は、決意を固めたように口を開いた。


「うちも、ふたりと一緒にマネージャーになる!」











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