忍足くんと変わり者 入学式から数日間。普通その期間、人はいつも以上に気を引き締め、行動をするもんやと俺は思っている。 せやから―……、 今俺と俺ひとつの教科書を覗きこむ女子生徒には、正直呆れさせられた。 当然此れは俺の教科書ではあるのだが、“教科書をみせる”ことはおれにとって大した問題では無かった。しかし。 「ごっめん!教科書忘れちゃって…見せてもらってい?」 あの態度は(ある意味)大した奴やと思う。 まあ、そんなこんなで俺とその女子生徒・泉友加梨の机は並べられていた。 中等部では見かけてへんとは思うたけど、中学3年生の頃イギリスから帰国した、帰国子女やという。 …人は見かけによらんとはいうけど、ほんまやってんなぁ。 「…今、なんかすっごく失礼なこと考えたよね?」 「考えてへんわ」 「いや、今のは絶対そうだわ。うちにはわかる。」 そもそも、初めから俺の気をひいとる様には見えへんかったし、つまりは猫を被ったような奴では無いと言う訳で。 自分で言うのも可笑しい話やけど、正直自分は異性からの評判はええ方や。 …それだけになんや、嬉しいような悲しいような…複雑な心境やな。 「はーあ、それで、そっちは何て名前だっけ?」 「隣の席やん、名前も知らんの?」 「だって、興味無いんだもん。」 無いんだもん、やあらへんやろ。 見かけはまあ、可愛い部類に入る泉やけど、この口の悪さはいかがなものか。 「忍足侑士や、」 「ふーん、覚えれたら覚えとくね!」 「いや、覚える努力くらいはせえや。」 …あかん、すっかり相手のペースに乗せられとるわ。 悔しさに若干口元が引き攣るのが感じられた。 と、不意に頭に軽い衝撃が与えられる。 「楽しそうね?先生も入れて頂戴?」 「「げっ…」」 言うまでもなく、その後問題をあてられることになる訳で。 思わずやれやれと溜め息をつけば、泉はにんまりと笑って言った。 ・・ 「まあこれから仲良くしてね、伊達眼鏡くん?」 僅か目を開いた俺にまたも楽しげに笑ってみせる彼女。 俺はどうも、相当変わった奴に出会ったらしい。 |