佐倉さんとD組



わたしのクラスには、天使がいました。

……………

1年D組。
これからわたしが1年を過ごすクラス。

教室に入るとまだ少し早いのか人はそんなに居なくて、黒板には達筆な文字で到着した者から自由に着席、とのこと。

生憎、第一希望の窓際一番後ろの席には先客がいて、残念に思いながらも荷物を降ろしその前の席へと腰かけた。

と、窓ガラスのある左側からは春らしい丁度よい日差しが差していて。

暖かい、なんて頬を緩ませれば、
なんとも幸せな気持ちになった。


「なあ、隣いいか?」


ふと声がかかる。

振り返れば赤みがかったおかっぱ頭の男の子がたっていて、ぼんやりとしていたわたしの頭は其処で漸く自分に話しかけられていると気づく。

よく見ればどことなく幼げに見える相手は髪型も含め女の子とも見てとれる。


「はい、どうぞ。」
「サンキュー!…危うく一番前になるとこだった」


そう言う相手に周囲を見渡せばすっかり生徒たちで、危機を逃れて安堵する彼の様子に思わず吹き出せば僅か目を見開いた後笑うな、と笑顔を見せた。

彼の名前は向日岳人くんというらしい。
先程自己紹介を終えて、がっくんと呼ばせてもらうことにした。好きなように呼べよ、との言葉を撤回されるところだったけど、なんとか説得した。


「へえ、テニス部だったんだね」
「おう。…つーかマジで聞いたことねぇ?一応、全国区なんどけどさー…」
「えっと、…ごめんね」


しょんぼりと肩を落とす姿に罪悪感を感じるけれど、女子校だったわたしたちの中学にあったのは当然「女子」テニス部で。…仕方ないよね?


「ま、高校でもテニスやるからさ、また見に来いよ」


なんとも素敵なお誘いに喜んで頷けば、
みるみるうちに瞳が輝くものだから。

やっぱり、がっくんは天使です。











第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -