うちも春菜も無事紹介を終えて、新入生達から少しだけ話し声が聞こえ始めると相田先輩が手を叩いて皆の注意を集めた。


「はい、2人の紹介も終わったことだし!早速本題に入るわよ。」


威勢良く放たれた言葉に誰もが練習開始を予想した。ところが、彼女の口から紡がれたのは…、

「シャツを脱げ!!!」

と言う、なんとも驚きの一言だった。これにはうち達は勿論、部員希望の新入生たちも騒然。ただ2年生の先輩方は揃って期待を込めるような視線で此方を見ていた。


―きっと、何かある。


皆が戸惑いながらもシャツを脱ぐなかうちはそんな考えを浮かべていれば、隣にいる春菜が真っ赤な顔で俯き、この状況に耐えていることに気づく。
…全く、いつになっても初々しい。

と、全員がシャツを脱ぎ終えたのを確認して相田先輩は1番端の男子から順にその体格を見ては一人ひとりに恐らくは弱点であろう箇所とその改善方法が告げられていた。

さらに一人が瞳を見開かせながら呟いた「合ってる…」との言葉からその正確さは証明され、うちは更に驚く。

先輩の説明によると、スポーツトレーナーである父の影響を受け、体格を見れば身体能力が数値で見える能力がついたのだそう。


「…それじゃ、監督にもなる訳だね…。」


隣りで春菜がぽつりと呟き、うちは何も言わずに頷いた。


「…ってあれ、うちらも脱いだ方がいいんじゃない?」
「えっわたしたちも…!?」
「え、いや、あなた達はマネージャーだからいいの。…だから泉さん制服は直してね。」


急いで制服を脱ごうとするうちに苦笑交じりにそう告げられ、その通りにきちんと正して見せると、相田先輩はそれでよし、と笑った。

うん、なんとも可愛らしい人だ。

…と、再び視線を戻した相田先輩の動きがぴたりと止まる。あれ、と目を向ければ例の赤髪、基、火神大我の姿があって。

相田先輩のような能力のないうちでも、コイツの身体能力の高さは伝わる。先輩の動きが止まったのを見るとそれほど驚きの数値が見えたのであろう。春菜もきっと驚いて……うん、まだ俯いてるのね。

そんな事を考えていれば、「黒子くんてこの中にいる?」なんて相田先輩の声が聞こえ、ああまたか、と思わず苦笑する。ざわつく先輩たちの声を聞くに、帝光中出身だということでとんでもない期待をかけているのだとわかる。

黒子はいない、ということで話が進みかけたところで、慌ててうちは口を開く。


「先輩、黒子テツヤはそこに―…」
「あの…スミマセン」



黒子はボクです
(、なんて控えめな声のすぐ後に相田先輩の悲鳴が響き渡った)








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