「ふう、結構人数集まったわね…」
ふたりが去って暫くしたバスケ部ブースでは、日向と相田、小金井の3人で集めた入部届けの確認を行っていた。
それなりの人材が揃ったことに加え、マネージャー希望者も居たからだろう。相田の機嫌はすこぶる良く、鼻歌を歌いながら枚数の確認を行っていた。
対して彼女とずっとブースで入部希望者を募っていた日向は淡々と隣りから1枚ずつ入部届けを引き抜いては記入内容に目を通しており、火神騒動からすっかり疲れ切ってしまった小金井は項垂れてしまっている。
ふと、手元に違和感を感じた小金井は、違和感の原因が入部届けだと気づきやれやれと上機嫌の相田へと差し出す。
「…集め忘れてる入部届け。」
「え?―…ああ、ごめん、」
慌てて受け取る相田だったが、名前の欄に目をやり、首を傾げる。
――黒子テツヤ。
こんな人物がいただろうか。
ずっと机番をしていたのに、彼女はこの名前に見覚えがなかった。
そしてこの人物の出身高校は…、
「帝光バスケ部出身!?」
「ええ!?あの有名な!?」
「しかも今年1年ってことは“キセキの世代”の!?」
予想外の名前に驚くふたり。
相田に至っては気付かなかったことに喚き始める始末だ。
その名前には日向も驚きの余り絶句するのであるが、気紛れに引き抜いた手元の入部届けを見てはまた、言葉を失う。
「…おい、これ…見てみろよ。」
「……帝光中学、男子バスケ部マネージャー…?」
「これってさっきの…!もう一人の子の入部届けは!?」
そう相田に指示され、重ねられた束の中から“泉 友加梨”の名前を探す小金井。
今日向が手にしている彼女の分を除き、女子生徒の名前は1枚しかないため難なく見つけ出すと、その手から素早く相田が奪い取り、両脇から1枚の入部届けを覗き込んだ。
女子高生らしい、丸い癖のある文字で書かれたそれ。
“泉 友加梨、
帝光中学男子バスケットボール部マネージャー。”
アメリカ帰りの少年、
“キセキ”と同世代の謎の帝光生、
そしてふたり揃ってやってきた、元帝光バスケ部マネージャー。
とんでもない1年が入ったのだと驚くばかりの3人であったが、再度彼らの入部届けに目を通す相田の口元には、楽しげに弧が描かれていた。
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