* がやがや。 擬態語だか擬音語だか、そんな感じの校門前。 っつーかまだ校門なんだけど。 人混みが好きな奴が居るとは思わないが、一応言うとあたしは物凄く嫌いだ。 ぶつかる肩、呼吸がしづらい、思うように歩けない。 嫌いになる要素しか見つからない。 「…最悪だろ、新学期早々。」 「あーっ見つけた、美樹!」 「は、」 あたしの名前を呼ぶ声。 …この際、誰だとかそんなのはどうでも良い。 ただ、こんなに人が居るときに大声で呼ぶとかマジ勘弁… 誰だよ、なんて声の方へ振り向けば、 時間が止まった気がした。 此処にいるはずない、見知った人物だったから。 「む、もしかして忘れちゃった?」 「…友加梨?」 「あ、なんだ。覚えてくれてるんじゃん!」 にへらと笑うこいつは、泉 友加梨。 ぱっと見ればスタイルも良いほうで、足も長く大人っぽい印象を受けるが、 口を開けば馬鹿の塊であり、何より笑ってしまえばこの通り、性格が見て取れる。 そんなこいつは氷帝の幼稚舎で知り合い、2年間親友と呼べるほど仲の良かった人物。 忘れた、なんて話をしているのは彼女がその後両親が海外赴任だとかで、 約5年間もの間イギリスに滞在していたからである。 「…にしてもいつ帰ってきたんだよ?」 「春休み中だよ」 「連絡ぐらいくれりゃ…」 「ふは、だって連絡先なんて知らないじゃんー」 「う、そうだったな…」 いきなりの出来事で頭が回らないが、5年も経ったはずなのに、 何も変わらないように見える。 …そりゃ、身長なんて比べ物にはならないけれど。 「…改めて、久しぶり、美樹。」 「…久しぶり、友加梨」 お互いにふっと笑って、俯く。 なんだか気恥ずかしかったから。 笑みが自然に浮かんで、堪えようが無い。 あたしには、友達なんて呼べるのはこいつだけだから、なのだろうか。 → |