出会いなんてものはいつも突然で、散々人を掻き回してはいずれ別れがくる。

それならいっそ、最初から触れなければ良いだろ?

…誰かがそう言って笑った気がした。





ピピピピ…

「っるせーな、何だよ…」

と、朝から騒々しい目覚まし時計を、
壊れるのではないかと言うほどに叩いて止めるのはもう日課となってしまった。


紫ノ宮美樹、というのがあたしの名前であるが、
正直そんなものは顔以外に人を区別するためのものに過ぎないと思っている。

今日からまた学校か、なんて新学期にありがちな事を考える。
それもそうだ、今日から新学期なのだから。


「今日から2年生ねー」
「…そうだけど」
「まあ、美樹ったら朝からご機嫌斜め?」
「いつもこうですけど何か」


可愛くない?おー、よく言われる。

平常運転にも程がある会話を終えれば、さっさと家を出て学園へ向かった。
もう一度言おう、今日から新学期である。


清々しい天気、外に出れば桜の花びらが舞っていた。

「…綺麗だ」

思わずそう口にすれば、自然と笑みが零れた。
…一年前、この木の前で写真を撮らされたっけ。
嫌だって言っても、あいつら引っ付いてくるんだもんな。

笑顔の両親と、ぶすっとした表情で今より少し幼いあたし。
写真の中にあるその光景を思い浮かべたら、また笑ってしまった。

「…っと、何1人で笑ってんだろ」

そう呟き学園へ向かう姿を、誰かに見られてただなんて知らなかった。














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